本記事の内容はNation’s Restaurant Newsのオンライン版に掲載されたものです。
※本記事は英語でもご覧頂けます:Coffee Shops’ Post-Coronavirus Evolution
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックがコーヒーショップに与えた打撃は大きい。米国のレストラン業界が全体的にその影響を受ける中、外食チャネルでのコーヒーの消費にとって、朝の通勤時間帯の客足がいかに重要であるかが鮮明となった。これは、ロックダウンや強制的な在宅勤務が、特に深刻な影響を外食チャネルにおける需要にもたらしたことを表している。ユーロモニターインターナショナルのデータによると、2020年、米国のコーヒーショップの客足は22%減少した。また、レストラン業界全体では15%の客足の減少となった。
しかし同年、コーヒーショップ経営者は、ドライブスルー、モバイル注文、テイクアウトに大規模な投資を行うなど、状況への適応を見せた。また、消費者行動も変化し、グループでの共同購入が大幅に増加したため、コーヒーショップにおける1注文あたりの金額は確実に上昇した。客足が減少する中、売上については、米国のレストラン業界全体の売上が21%減少したのに対し、コーヒーショップは16%の減少にとどまっている。コーヒーショップは、短時間で注文から提供までを行うクイックサービス全体の中では、あまりデリバリー注文が多いカテゴリーではない。しかし、スマホを活用したサービスモデルの導入で一歩先を行くなど、2020年の現実に合わせた方向性の転換が(比較的)上手くいったといえる。
今後は、スピーディな非接触型サービスへの取り組みがさらに加速し、豊富なリソースを持つCoca-Colaなどの主要企業がこの分野への投資を強化することが予想される。コーヒーショップに消費者の客足が戻るようになると、スマホを軸として、自宅での消費、販売小売店、コーヒーショップ、そして最新の機能を備えた自動販売機などを結びつける新しいビジネスモデルが増えていくだろう。
コーヒーショップは、他のクイックサービスレストランカテゴリーとは異なり、自宅での消費との間に強い相互関係がある。過去10~15年間、世界の消費者の多くが、景気が落ち込む度に、家庭で消費するコーヒーのアップグレードを繰り返してきた。これは、家庭用のプレミアムなコーヒー製品の方が、毎日カフェやコーヒーショップに行くよりも1杯あたりの価格が格段に安いことが背景にある。2020年の米国も例外ではなく、コーヒーメーカーの出荷台数は10%増加し、同カテゴリーとしては少なくともこの15年間で一番の伸び率となった。今後1~2年、このように家庭用コーヒー機器にお金を使う人々が増えることで、外食チャネルでのコーヒー消費が伸び悩むことも考えられる。
パンデミック収束後の環境下では、コーヒーショップや自動販売機といった外出先でのチャネルと自宅での消費の境界がさらに曖昧になり、その要因として、スマホの役割がさらに大きくなると考えられる。例えば、消費者はスマホを使うことで、自分の好みに関する情報をどこにでも持ち運びでき、あらゆる場所で特定ブランドのお気に入り商品の購入が容易になるだろう。
大手企業の中には、既にこのようなプロセスの導入を始めているところもある。一方、中小規模のチェーン店や個人経営店にとって、COVID-19収束後の市場環境は非常に厳しくなるだろう。パンデミックが様々な重圧をもたらしたことに加え、人との接触を減らし、テイクアウトへのシフトが進むコーヒー業界では、小規模な事業者が差別化を図ることがこれまで以上に難しくなることが予想される。コーヒーショップの店内を利用するよりもスマホでテイクアウトする機会が増えるようになると、一般的なコーヒーショップと、例えば最新の自動販売機との実質的な違いは、より小さくなるだろう。また、個人経営店がスマホからの注文に対応するためのアプリは数多く存在するが、消費者がコーヒーショップごとに個別のアプリを利用するのであれば、そのアプリ数には限界がある。
ユーロモニターインターナショナルは、米国のコーヒーショップの売上は2025年までに500億米ドルに達するなど、2020年から年平均10%の成長を遂げると予測している。個人経営のコーヒーショップに重圧がかかる中、自動販売機やコーヒーショップ、缶コーヒーやペットボトルコーヒーなどのRTD(Ready To Drink)商品など、場所にかかわらず「すぐ飲めるコーヒー」の消費が増加する傾向にあることは間違いない。
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(翻訳:横山雅子)