執筆:ユーロモニターインターナショナル イノベーションチーム ザンディー・ブレムナー
解説:ユーロモニターインターナショナル ディレクター 鈴木 健太郎
メガトレンドとは産業をまたぎ、世界市場に影響を与える消費者動向や意識の長期的な移り変わりの事を指します。メガトレンドは避け難く、止め様が無い大きな流れであり、今この瞬間にもB2CおよびB2B市場を形成し、そして市場の将来に影響を与え続けていきます。いかなる企業も、メガトレンドを踏まえた長期的な視野をもって市場を分析している事が、トレンドを追従する対応をするのではなくゲームチェンジャーになる事、未来の消費者ニーズへのより良い備え、競合企業に差をつけ、製品カテゴリーまたは業界の一歩先を行く事につながります。現在ビジネスリーダーとされる企業は長期的な勝者でいるべく、いずれもメガトレンド分析を自社のビジネス戦略に組み込んでいるべきですが、それがなされていない企業が少なからずいます。なぜでしょうか?
何事も一から始めるのには手間も時間もかかります。仮にメガトレンド分析が上手く出来たとしても、「アクションプランを実行に移す」という重要な課題作業は残ります。企業の多くは、いまだにメガトレンド分析を戦術的なビジネス決定に落とし込む作業に苦労しています。また、メガトレンド分析をビジネス戦略に組み込む事とは、一回で完了する事ではありません。継続的なプロセスとして長期的に実行されなければならないのです。
株式市場の参加者が目先の利益を求める中、企業が従来のやり方を抜本的に変えることは容易ではありませんが、その株主達は同時に、自らの投資が長期的な配当につながる事をも望んでいるのです。効率化が求められる今日のビジネス環境下では、イノベーションへの的確な投資が、今まで以上に求められています。
それでは、実際の仕事の中で、どのようにメガトレンド分析をビジネスプランに落とし込むべきでしょうか。鍵となる5つのステップ(アクション)を説明します。
1.「メガトレンド」のフレームワークを使ってイノベーションを導く
メガトレンドが自社の業界、カテゴリー、製品、ブランドに与える直接的および潜在的なインパクトを査定し、リスト化(マトリックス化)する事でフォーカスすべきエリアを特定しましょう。
メガトレンドを軸としながら、イノベーションプロジェクト、新アイディアを評価してみましょう。そのプロジェクトまたはアイディアが、いずれのメガトレンドが示唆する将来の消費者像に対して「響かない」ようであれば、そのイノベーションプロジェクト、新アイディアは見直す必要があるのではないでしょうか。
ユーロモニターが提言する8つの消費者メガトレンドについて、詳しくはこちらの白書(White Paper)をご覧下さい:
‘Megatrend Analysis: Putting the Consumer at the Heart of Business’
2.具体例を使って理解力を鍛え、実行に活かす
メガトレンドを分析し、どのトレンドがどの消費者グループを惹きつけるのか、自社のビジネスにどのように適用されるか、戦術を考えてみる事で洞察力を高めましょう。最近のヒット商品・サービス事例がどのメガトレンドに当てはまるのか考えるなどして、新しいアイディアやひらめきを試してみましょう。
革新的なヒットの鍵となるのは、自分たちの業界や製品カテゴリーを飛び越えて見渡す視線です。別産業の製品開発パターン、特に自社の産業には未だに存在しないパターンを研究してみましょう。例えば、飲食品業界のトレンドはしばしば美容業界にインパクトを与えています。
3.インパクトを数値化し、プロジェクト・新アイディアに優先順位をつける
メガトレンドのインパクトを数値化するため、指数となる製品カテゴリー、製品、消費者グループを特定します。市場規模、成長率、トレンドが産業や製品カテゴリーに与えるインパクトを概算し、自社のビジネスにとって利益を生み出す消費者ニーズのランク付け、優先付けをします。
ROIの観点からイノベーションプロジェクト、新アイディアを数値化、絞込みおよび優先化しましょう。
4.自社製品ポートフォリオと開発パイプラインをメガトレンドに照らし合わせ査定してビジネス効率を最大化する
現在の自社製品ポートフォリオとイノベーション・パイプラインを、メガトレンドの分析により今後予想される消費者ニーズに照らし合わせ、最もマッチする消費者ニーズと自社製品の組み合わせ、そして「空白となっている市場機会」を特定し、最大の効率化を目指します。
現行のブランド・製品の課題と、将来的な市場機会への投資戦略の両方に活用できるバランスの取れたイノベーション・ポートフォリオを作成しましょう。
5.上記ステップを毎年実施する
毎年、各メガトレンドの重要度を改めて査定してみましょう。メガトレンドの「重要度」は、毎年変わるものではないはずですが、ダブルチェックをしてみる良い機会です。メガトレンドに対する解釈は毎年変わりゆくものであるため、上記2~4のステップのプロセスは毎年しっかりと行われるべきです。
メガトレンドを踏まえて自社ビジネスの長期戦略・目的を設定するというチームカルチャーを築きましょう。一連のメガトレンド分析・プロジェクトのまとめは経営陣、イノベーションチーム、研究開発チームをはじめとした関係者にシェアし、「メガトレンド分析によるビジネス・プランニング」という取り組みへの理解とサポートを得るよう働きかけをしましょう。
ユーロモニターインターナショナルはメガトレンド分析のエキスパートです。我々のイノベーション・コンサルティングチームが、企業の皆様のメガトレンド分析をどのように直接的にビジネスへ落とし込むべきか、下記の手法をもってお手伝いをします:
- メガトレンドのマッピングと分析
- メガトレンドやトレンドのサイジングと予測
- トレンド転換期分析
- シナリオ分析
- インタラクティブ・ワークショップ
世界100カ国において30のコンシューマー産業を調査しているユーロモニターのナレッジベースが、企業の皆様のクリエイティブなひらめきやアイディアの創出をお手伝いします。4,000製品カテゴリーと主要会社・ブランドをカバーする統計データベース(Passport)が、長期的な市場機会の特定、新規ビジネスの将来性の見定めといった、皆様のイノベーションプロセスを正しい方向に導きます。
メガトレンド分析とイノベーションへの活用の成功事例をより詳しくお調べになりたい方は、こちらのウェビナー‘Megatrend Analysis and its Impact on Innovation’をご覧下さい。
さらなるご相談は、お気軽にユーロモニターまでご連絡下さい。