※本記事は英語でもご覧頂けます:Current and Future Drivers of Asia Pacific Consumer Markets
2020年、アジア太平洋地域は世界の全地域の中で最も力強い経済回復を示した。2021年も、景況感や消費マインドの向上を背景に、実質GDP成長率が7.1%増と、やはり世界の中で最も急速に成長することが予想されるなど、アジア太平洋地域には世界市場全体の回復を牽引することが期待されている。
消費者中心の現代社会において、消費者の価値観を理解することは極めて重要であり、新型コロナウイルス(COVID-19)によって今までの消費者習慣の多くが変わりつつある中、その重要性はますます高まっている。ユーロモニターは、アジア太平洋地域でパンデミック収束後も消費者行動の変化に影響をもたらし続けるであろう5つのテーマ(ウェルネスを考え直す、暮らしをより便利に、デジタルライフ、サステナブルな生活、体験を求めて)を特定した。
アジア太平洋地域で事業を展開する企業にとって、こうしたトレンドの変化を常に把握することは、投資先を見極めたり、既存のブランドエクイティの向上や、将来的な回復力を生み出すうえで重要となる。
デジタルライフ
2020年、アジア太平洋地域ではEコマース売上が加速し、世界の全地域の中で最も高い売上高を記録したが、特にモバイルコマースは売上が著しく増加した。同地域の消費者は、モバイルを利用した買い物や料理の注文、アプリを使った健康診断などに素早く順応し、生活スタイルを急速に変化させている。このようにアジアでは、あらゆる業界のカスタマージャーニーにおいて、デジタルが今や不可欠な要素である。アジアの消費者は、世代を問わず、より快適でスマートな生活を送るため、高度かつ総合的なハイテクプラットフォーム、スーパーアプリのエコシステム、強化されたラストマイル配送などのソリューションに精通しつつある。
モバイル端末を利用した活動:「ほぼ毎日、もしくは週1、2回は利用している」と回答したアジア太平洋地域の消費者の割合(2019年/2021年)
ウェルネスを考え直す
COVID-19の発生を受け、アジア太平洋地域でも消費者の衛生と安全への関心が高まった。ウェルネスに対する需要が高まり、消費者は日用品に対して心身の健康を向上させる機能を求めたり、十分な睡眠、運動、ストレス解消や不安解消のためのアクティビティを行うなど、ホリスティックな健康へのアプローチをとるようになった。消費者が「ホリスティックな健康とウェルネス」という考え方を取り入れるようになり、ウェルネスへの需要はさらに拡大すると予想される。予防的健康、感情のウェルネス、衛生意識、遠隔医療などは、今後企業が注目すべき分野となるだろう。
サステナブルな生活
COVID-19 により、個人の行動がいかに世界に変化をもたらすかということが明らかになり、消費者は外出自粛の中で消費習慣を見直すようになった。日本や韓国、中国などのいくつかのアジア諸国では、政府が2030年へ向けた持続可能な開発目標を達成するための対策を講じている。アジア太平洋地域ではサステナブルな生活が大きなテーマとなっているが、この広大な地域には、優先順位やニーズの異なる様々な市場の消費者が集まっていることを考慮しなければならない。これらの国で事業を展開する企業は、自社がそれぞれの市場において、どの分野でビジネスを行うべきか、状況を把握することが欠かせない。
主要国における「サステナブルな生活」のための取り組みの割合
暮らしをより便利に
COVID-19の発生に伴い、様々な制限や外出自粛といった措置が取られたことにより、人々の日常生活は一変し、自宅に居ながら物事を行うことが増えた。消費者の暮らしをより快適に、より良く、より安全にするという付加価値を持った商品やサービスは、今後も消費者に求められていくだろう。アジア太平洋地域全体における主要なテーマとして、非接触型の小売、ラストワンマイル革命、バーチャルのメインストリーム化、パーソナライゼーションなどが挙げられる。企業は、各国の市況や人口動態に応じて消費者グループを再査定し、それぞれの求める利便性に合わせた戦略を考えていく必要がある。
体験を求めて
アジア太平洋地域では、外出自粛が当初の想定よりも長期化したことから、消費者のコト消費へのペントアップ需要が高まり、ホームテインメントが、新たな日常生活や消費習慣の中心に位置付けられるようになった。ユーロモニターのライフスタイルサーベイによると、2021年のアジア発展途上国の消費者は、体験にお金を使うことを重視していることがわかった。これは、企業にとって、体験型サービスの提供に大きな商機があることを示している。企業やブランドにとっては、消費者の購入までの道のりを改善し、モバイルにおける自社のプレゼンスを高め、様々なチャネル間で安定したブランド体験を提供することが、当面の優先事項になるだろう。
各トレンドについての詳細は、レポート『Current and Future Drivers of Asia Pacific Consumer Markets』(有料、タイトル日本語訳『現在、そして今後のアジア太平洋地域の消費者市場:成長ドライバーを探る』)をご確認ください。
また、これらのトレンドが、自社の事業や製品分野にどのような影響をもたらすかについて、詳しい調査にご興味のある方は、こちらまでお問い合わせください。
(翻訳:横山雅子)