※本記事は英語でもご覧頂けます:Top Six Trends Shaping the Global Snacks Industry
2020年3月のCOVID-19パンデミック発生以降、加工食品業界でそのあおりを最も受けているのは菓子・スナック類である。健康意識の高まりと、衝動買いの機会が激減したことが、販売額ベースにみる菓子・スナック市場の成長鈍化の大きな要因となっている。なかでもチョコレート菓子、ガム、飴などの砂糖菓子といった菓子類は、紛れもなく新たな市場環境の影響を最も受けているカテゴリーであるが、すべての影響がマイナスだったわけではない。例えば、2021年にはチップスやビスケット、ポップコーンを含む米菓・スナック菓子が好調な業績を見せ、菓子・スナック類カテゴリーの中でも最大規模となった。今後、菓子・スナック業界を形成していくのは、「特別な理由による食事制限の台頭」、「砂糖削減」、「ホームテインメント」、「デジタリゼーション」、「持続可能性」、そして「植物性」の6つのトレンドになるだろう。
健康最優先:特別な理由による食事制限と砂糖削減
「薬としての食品」や「予防衛生」といった考えにより、消費者が免疫力の向上を求めると共に積極的に心身の健康を管理するようになり、機能性食品カテゴリーが恩恵を受けている。一方で、新型コロナウイルス(COVID-19)に対する感染防止対策や外出自粛によって人々が移動しなくなったことから、体重管理に関する懸念が高まった。こうしたことを背景に、ケト、パレオ、低炭水化物といった食生活に注目が集まっている。
また、消費者は健康や減量のため、さらには、医師からの医学的なアドバイスや推奨もあり、糖分の摂取を制限するようになった。ユーロモニターの『ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ヘルスアンドニュートリションサーベイ』調査によると、2021年、消費者の間で2番目に広く普及した食生活の傾向・制限は「精糖の摂取制限」であった。企業は、こうした消費者趣向に対応した新製品の開発や、「砂糖不使用」の訴求を加えるなどしている。また、世界的にも増加する肥満の割合に懸念を抱く各国政府も、糖分を控える傾向を後押ししている。
食生活の好み / 食事制限(2021年)
自宅でのエンターテインメントとショッピング:ホームテインメントとデジタリゼーション
菓子・スナック類の消費機会は、外出先での衝動的な購入から、自宅でのご褒美へと変わりつつある。ロックダウンや在宅勤務の導入により、消費者は家にいる時間が長くなり、テレビやストリーミングサービスを観たり、ゲームをしたりする時間が増えた。菓子・スナックメーカーにとっては、消費者がコンテンツやゲームを楽しむ時間用の製品を提供するといった商機が生まれている。例えば、家族や友人が自宅に集まり、一緒にスナックや菓子を食べる機会が増えていることから、ファミリーサイズ・大袋の商品が人気を集めている。
Eコマースの成長は、パンデミックがもたらした最大の変化のひとつである。菓子・スナックメーカーも、自社製品の売上を伸ばすためだけでなく、消費者をより良く理解し関わりを深めるために、デジタルという新たなエコシステムを好意的に受け入れている。こうしたことが、企業が消費者とより密接につながるためのD2Cウェブサイトの設立、ライブストリーミングイベントの開催、そしてソーシャルメディアの活用へとつながっている。ソーシャルメディアについては、昨年の成長が最も大きかったのはTikTok(ティックトック)であり、ユーロモニター『ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:デジタルサーベイ』調査によると、同プラットフォームの月間アクティブユーザーは、2020年は24%であったのに対し、2021年には34%に達している。
消費者の買い物行動における変化の推移(2013-2021年)

菓子・スナック類も地球に優しく:サステナビリティとプラントベース
環境負荷の低減が、消費者にとっても菓子・スナックメーカーにとっても最優先事項であることに変わりはないが、今回のパンデミックをきっかけに、社会的弱者への支援、地元の農家やコミュニティ、従業員、サプライヤーおよびその他のビジネスパートナーへの支援など、社会的活動に焦点を当てた企業の対応に注目が集まっている。大手メーカーたちは、持続可能な原材料の開発、パッケージ廃棄物の削減、気候変動への取り組み、そして地球および人々に良い影響をもたらすための様々な取り組みを行っている。
同時に、植物由来製品の拡大は、健康、環境配慮、動物愛護の観点から、食品業界における最も重要なトレンドのひとつとなっている。この波は菓子・スナック類にも浸透しており、アイスクリームをはじめ、チョコレートやスナックバーといったカテゴリーにも多くの新製品が登場している。ユーロモニターの『ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ヘルスアンドニュートリションサーベイ』調査によると、ヴィーガンやベジタリアンの数は世界的に見てまだ少ないが、それに比べ、動物性食品を控えようとしている人の数は非常に多い。
食事制限を行っている消費者の割合(2019-2021年)
高い成長をもたらすイノベーション
向こう5年の予測期間(2022年〜2026年)における菓子・スナック類の売上額は、2020年および2021年よりも高い成長率が見込まれ、中でも米菓・スナック菓子が最も高い年平均成長率を記録することが予測される。一方、菓子類の年平均成長率は最も低く、在宅勤務が普及することによって衝動買いの機会が制限されることや、人々の対面の交流が減ることから、ガム、ミント、のど飴などのブレスケア関連製品のカテゴリーにもマイナスの影響が及ぶことが予想される。回復のカギとなるのはイノベーションだ。サステナブルなパッケージの導入、機能性、懐かしさなどの感情訴求、また、例えばゲーマーなど、特定の消費者グループをターゲットとした製品の発売などが考えられる。
これらのトレンドに関する詳細については、レポート『World Market for Snacks』(有料)にてご確認ください。
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(翻訳:横山雅子)