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東南アジアと中国における使い捨て衛生用品の成長見通し

4/26/2022
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※本記事は英語でもご覧頂けます:Growth Outlook for Disposable Hygiene in Southeast Asia and China

世界の小売向け使い捨て衛生用品市場の規模は、2021年に1,120億米ドルとなり、2026年には1,290億米ドルに達すると予測されているが、中でもアジア太平洋地域は、2021年の世界の小売売上の実に40%以上を占めている。進化する衛生基準、消費者意識の高まり、購買力の向上、イノベーション、そして製品の入手可能性が向上したことがアジア太平洋地域における好調な売上を支えている。

地域別、世界の小売向け衛生用品の売上成長率(百万USD、2021年)

image21l2.pngアジア太平洋地域では、中国と東南アジアが地域全体の売上の70%以上を占めており、中でも中国の割合が大きい。2021年の小売売上高は、中国が280億米ドル、東南アジアは60億米ドルとなり、東南アジアではインドネシアとベトナムが成長を牽引している。

子ども用おむつ・使い捨てパンツ市場の成長に立ちはだかる、出生率の低下

子ども用おむつ・使い捨てパンツは、アジア太平洋地域における小売向け使い捨て衛生用品の売上に大きく貢献している製品カテゴリーのひとつだ。しかし、地域全体が出生率の低下という課題を抱えており、人口動態が逆風となり、同カテゴリーの成長を抑制している。東南アジア最大の人口を抱えるインドネシアでも、2021年の出生率が1,000人当たり17人と、5年前の18.8人から低下している。中国の出生率も1,000人当たり8人と、5年前の13人から低下し、0~4歳の子どもの人数が1,100万人以上減少したことになる。2026年には、中国における子ども用おむつ・使い捨てパンツを使用する人口が、2016年に比べの約3分の2にまで減少すると推定されている。

アジア太平洋地域では、家族計画政策、家族や結婚に対する社会的な考え方の変化、教育水準の向上、女性の労働参加率の上昇といった様々な要因が重なり合い、出生率の低下につながっている。中国は、2021年5月に三人っ子政策を発表し、高齢化の流れに歯止めをかけようとしている。しかし、2016年初頭に導入された二人っ子政策が出生率の持続的な上昇につながらなかったことから、この新たな政策が同国の人口に対し、どの程度大きな影響をもたらすのかは不透明である。

同地域では消費者基盤が縮小している一方で、子ども用おむつ・使い捨てパンツの小売売上高は今後5年間で成長すると予想され、特に使い捨てパンツがこの増加を推進すると見られている。これらの製品カテゴリーは、同地域における一人当たり消費量が依然として先進国より低いことから、有機的な成長の余地があるといえる。パンツタイプの製品は、価格が比較的高めだが、その利便性と耐久性によりニーズが安定している。また、パンツタイプはトイレトレーニングや自立心の育成に役立つことから、保護者からも好まれる傾向にあり、メーカーも新製品を開発して対応しようとしている。例えばインドネシアでは、2021年、Softex(ソフテックス、現在はKimberly-Clark(キンバリー・クラーク)が所有)が、赤ちゃんの自由な動きを促す「All-New Sweety Gold Pants NextGen」というパンツタイプの製品を発表した。

この地域は、子ども用おむつ・使い捨てパンツの一人当たりの消費量がまだ少なく、未開拓の消費者層も多いことから、業界にとっては、小売の拡大、製品イノベーション、魅力的な価格戦略などによって、市場への浸透をさらに推進するチャンスがある。また、より高機能な付加価値のある製品やパンツタイプといった高価格帯セグメントにおけるイノベーションが、同カテゴリーの売上成長を後押しすると考えられる一方、製品をより広く普及させるためには、手頃な価格戦略が今後も重要となるだろう。

生理用品分野の成長を促進するカギとなるのは、イノベーションと教育

アジア太平洋地域における小売向け使い捨て衛生用品の売上最大カテゴリーは、金額・数量ともに生理用品である。東南アジアでは、12〜54歳の女性人口が2026年までに1億8,900万人に達すると見込まれており、生理用品カテゴリーは2022年から2026年にかけて年平均成長率5%で成長し、市場規模は19億米ドルに及ぶと予測されている。一方、中国の生理用品市場は、好まれる製品タイプであるナプキン(パッド)の一人当たりの消費量がすでに高いことや、人口の高齢化など、多くの課題に直面していることから、より価格の高い製品への買い替えやプレミアム化などによる穏やかな成長にとどまるだろう。

小売市場の成長を後押ししているのは、女性の可処分所得の向上や、政府や非営利団体による女性の健康と衛生に関する継続的な教育活動、そして業界のイノベーションである。

生理用品カテゴリーにおけるイノベーションの取り組みは、製品の機能性と付加価値を中心に行われている。例えば、インドネシアの大手企業のソフテックスは、パンツ型の生理用ナプキン「Softex Celana Menstruasi」など、ここ数年で付加価値の高い製品を数多く発売している。同製品の成功を受けて、Unicharm(ユニ・チャーム)が「Charm Sleep Protect Panties」を発表するなど、他の大手企業も同様の製品を投入している。中国では、同カテゴリーを牽引する「Sofy」が、2020年、日本独自の技術を採用し、生理用ナプキンに温感部分を組み込んで下腹部まで快適性を高めた新製品を発売した。しかし、こうした革新的な製品は価格が高くなりがちであり、ターゲットが高所得の消費者層に限定される可能性がある。

また、女性用衛生用品から発生する廃棄物に対する関心が高まり、より持続可能な代替品の必要性が叫ばれて久しい。ユーロモニターインターナショナルが2021年に実施した「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ヘルスアンドニュートリションサーベイ」によると、中国、インドネシア、タイの回答者の21%が再利用可能な下着を使用するようになり、8%が再利用可能なナプキンを使用していることが明らかとなった。再利用可能な製品に切り替えるにはコストが懸念されるものの、環境に配慮した持続可能な選択肢を求める消費者が増えている。ベトナムでは、現地ブランドの「Green Lady Vietnam」が、環境に配慮する若い消費者をターゲットに、再利用可能な生理用品を販売している。また、中国のランジェリーブランド「NEIWAI」や「Uniqlo(ユニクロ)」は、使い捨て製品に代わるものとして、洗濯できる吸水型サニタリーショーツを発売した。これらの製品の売上は使い捨て製品に比べてまだ小さいものの、再利用可能な代替品への注目は高まりつつある。この傾向は、使い捨ての生理用品を扱うブランドにとって、環境に優しい消費者層に響く革新的な製品やパッケージを通して持続可能性の問題に取り組むという、課題と機会の両方をもたらしている。

機能性、素材、フォーマット、付加価値といった面でのイノベーションは、今後も東南アジアおよび中国市場の成長の原動力のひとつであり続けるだろう。一方で、ブランドや企業は、未開拓市場の大きな割合を占める低所得者層からより多くのユーザーを取り込むべく、品質と価格のバランスを取る必要がある。

高齢化社会に対応した大人用失禁用品

小売向け大人用失禁用品は、絶対値としてはまだ小さいものの、アジア太平洋地域で最もダイナミックな使い捨て衛生用品のカテゴリーであり、2021年には一桁台後半の成長を記録している。東南アジアと中国の人口は、日本などの先進国市場からすれば比較的若いと見られているが、進化する人口動態と高齢者人口の増加は、同カテゴリーの成長を支える重要な顧客基盤となるだろう。

2021年、東南アジアにおける大人用失禁用品の小売売上高は4億2900万米ドルとなり、2021年から2026年にかけては年平均成長率(金額)15%で成長すると予測されている。東南アジア地域における同製品カテゴリーの成長は、主にインドネシアが牽引している。同国の65歳以上人口の割合はシンガポールやタイほどではないものの、高齢者の絶対数が多いため、有機的成長の機会が豊富である。一方、中国の市場規模はアジア太平洋地域の中で日本に次いで第2位であり、2021年の小売売上高は9億7,200万米ドルであった。2026年には、中国がアジア太平洋地域のトップになると予想されており、小売売上高は2021年から2026年にかけて年平均成長率18%で増加すると考えられている。世界最大の高齢者人口を有するといった要素が、同国の小売向け使い捨て大人用失禁用品の普及が進むと予想される背景にある。

65歳以上人口の割合(2000-2040年)

imagep5exe.pngしかし、小売向け大人用失禁用品の成長戦略を考えるうえで考慮すべきは、人口動態の変化だけではない。この地域では、消費者の意識、社会的偏見、価格などが、アジア太平洋地域における普及を阻む主な要因となっている。また、これらの要因から、選ばれる製品も、一般的に消費者からよりコスト効率が良いと考えられている、大人用おむつなどの中度/重度の失禁用に設計された製品タイプに限定されることが多い。ユーロモニターインターナショナルが2021年に行った「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ヘルスアンドニュートリションサーベイ」によると、中国とタイでは、依然として大人用おむつの使用が最も多く、中国では46%、タイでは31%の消費者がそれらを使用していると回答している。

また、再利用可能な大人用失禁用品の使用率の高さには、コストなども影響している。「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ヘルスアンドニュートリションサーベイ」(2021年)によると、中国では42%、インドネシアでは38%、タイでは19%の回答者が、再利用可能な大人用失禁用品を使用していると回答している。さらに、中国、インドネシア、タイでは、大人用失禁用品として生理用品を使用していると回答した人の割合が高く、30%を超えている。これらの調査結果は、製品の認知度向上、イノベーション、入手しやすさの改善によって、大人の失禁用に特化した使い捨て製品の使用を推進できる商機があるということを示している。

この地域の大人用失禁用品は、通気性や吸収性などの機能性、社会的偏見に配慮した薄さや目立たなさなどを中心に、イノベーションが進んでいる。インドネシアでは、ソフテックスが「Confidence Adult Pants」という製品を発売し、目立たないカットとスタイル、そして目立たないながらも柔軟な動きを可能にする「フレキシブルムーブ技術」を訴求している。さらに、中国では2021年、キンバリー・クラークが、主に軽失禁の症状のある中国人女性向けに、ブランド「Poise」を発表した。Hangzhou Coco Healthcareも女性をターゲットにした失禁用品を発表し、失禁用品のラインアップを拡充している。

重要課題である予防衛生習慣が支えるはワイプ製品へのニーズ

ワイプ製品は、2020年にパンデミックの恩恵を最も受けたカテゴリーであったものの、2021年には需要が正常化し、成長ペースが鈍化した。しかし、一人当たりの消費量では、パンデミック前の水準を上回っている。東南アジアと中国では、金額ベースで健全な成長を継続しており、2021〜2026年の年平均成長率(金額)はそれぞれ11%と8%になると予想されている。今後は、所得の向上、ワイプ製品の認知度向上、イノベーション、Eコマースの台頭などが、需要や売上を押し上げる要因となるだろう。

新製品開発の観点から見ると、抗菌性を訴求する製品が依然として人気であり、重点的にイノベーションが行われている。その他の製品訴求には、天然、低刺激性、水性、肌への効果、生分解性なども挙げられる。また、持続可能性の目標を達成するべく、リサイクル可能なパッケージも注目されつつある。

大きな潜在的可能性を秘める東南アジアと中国

中国と東南アジアの小売向け使い捨て衛生用品の売上高は、今後5年間で伸長し、アジア太平洋地域市場全体の絶対成長率の85%近くを占めるようになると予想されている。人口動態の変化は子ども用おむつ・使い捨てパンツの有機的な成長にとっては大きな問題になることが考えられるが、とりわけ同地域のまだ満たされていない潜在性を考えると、使い捨て衛生用品に対する消費者の意識の高まりや、より手頃な価格への改善、習慣の定着、製品イノベーションが今後の成長を推進していくと思われる。ただし、成功するためには、東南アジアと中国の各市場における経済的・文化的な差異を認識し、現地の消費者のニーズにうまく対応することが不可欠である。

より詳細な情報については、『Megatrends: Wellness - Mapping Key Opportunities in Asia Pacific』にてご確認ください。

世界各国・地域のおむつ・生理用品業界の統計データや定性情報をお探しの方は、こちらまでお問い合わせください。

(翻訳:横山雅子)

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