※本記事は英語でもご覧いただけます:Exploring Competitive Strategies in Consumer Health
人々の健康への関心がかつてないほど高まる中、コンシューマーヘルスは今、非常にダイナミックな業界になりつつある。ユーロモニターインターナショナルのレポート『Competitive Strategies in Consumer Health』では、同業界を形成し、企業の力強い成長を推進する主な要因を考察している。これらの要因には、ビタミン剤やサプリメントを定期的に摂取することによる予防衛生、病気治療のためのOTC製品、デジタル化、パーソナライゼーションの一般化、そしてホリスティックなサステナビリティなど、包括的な健康ウェルネスの一部として注目されつつあることが含まれている。
ホリスティックな健康に向けて進む世界と、それを支える企業
コンシューマーヘルス業界は強靭だ。人々は長く健康的な人生を送るために日々の体調を整え、病気の予防や治療もできるホリスティックな健康に重きを置くようになった。パンデミックが落ち着きつつある中、Nestlé(ネスレ)、GlaxoSmithKline(グラクソ・スミスクライン)、Bayer(バイエル)、Sanofi(サノフィ)、Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)などの大手企業は、この「ニューノーマル」を考慮しつつ戦略を調整している。
業界を形成し、成長へと導く主な要因
2021年、パンデミックによるドミノ効果が世界経済に不透明感をもたらし、世の中が絶え間なく変化し続ける中、コンシューマーヘルス業界はビタミン剤・栄養補助食品カテゴリーの継続的な成長および他のカテゴリーの回復もあり、4%の成長を記録した。そうした中、多くの企業が戦略やM&A活動、ブランドおよび地理的ポートフォリオの見直しを行っている。例えば、ネスレはThe Bountiful Company(バウンティフル・カンパニー)からビタミン剤・栄養補助食品ブランドの大規模な買収を実施した。また、グラクソ・スミスクラインとジョンソン・エンド・ジョンソンは、より合理的に注力するためのコンシューマーヘルス事業の分離を発表した。ユーロモニターは、業界を形成し、成長を推進する5つの主な要因を特定した。これらは以下の通り:
予防衛生への注力
COVID-19のパンデミックを受け、消費者は単なる病気の治療を超え、心身のサポートを含むホリスティックな健康を保つという、長い間満たされてこなかったニーズに関心を持つようになった。例えば、ビタミン剤・栄養補助食品を定期的に摂取し免疫力を高めることは、「健康である」ことの「ニューノーマル」になりつつある。このような消費者意識の高まりは、2021年に実施されたユーロモニターの「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:コンシューマーヘルスサーベイ」の結果からも明らかだ。同サーベイによると、63%の消費者が健康であることとは、「健康な免疫システム持つこと」であると答え、56%が「病気になっていないこと」、55%が「健康な体重を維持すること」であると回答している。企業は、時代に合わせて消費者に支持される存在であり続けるために、こうしたウォンツやニーズに応えようとしている。例えば、グラクソ・スミスクラインは前述の通り、2022年半ばまでに、2つの会社に分割することになる。グラクソ・スミスクラインとして処方薬と医薬品を中心に事業を継続する会社と、Haleon(ハレオン)としてコンシューマーヘルスケア事業を担う会社に分割される。これにより、ハレオンは自社のコンシューマーヘルス・メガブランドに集中することで、「Deliver better everyday health with humanity(もっと健康に、ずっと寄りそって)」を実現しようとしている。
これらのトレンドが今後5年間でコンシューマーヘルス分野の業績に「とても」もしくは「非常に」影響をもたらすとした回答者の割合
病気の治療
2021年、OTCカテゴリーの中で病気・疾患治療薬への需要が回復した。全身性鎮痛剤、特にアセトアミノフェンは、COVID-19やワクチンの副作用による症状の緩和を目的に使用され、売上が増進した。また、季節性インフルエンザの再来により、小児用の咳、風邪、アレルギー治療薬は、2021年、名目ベースで10%増加した。需要が回復をもたらす中、この分野ではイノベーションがさらなる成長を推進する要素となるだろう。例えば、ジョンソン・エンド・ジョンソンは2021年、コンシューマーヘルス事業を同社のメディカルテクノロジー事業とJanssen(ヤンセン)の医薬品事業から分離することでイノベーションをさらに加速させ、事業戦略を合理化し、消費者と患者により良いサービスを提供することを目指していると発表した。
デジタル化
ヘルスケアにおけるデジタル化は、Eコマースからはじまり消費者トレンドの把握、新製品開発のためのイノベーション、サプライチェーンの効率化、薬局・診療所・病院を通じた消費者とのつながりを実現するためのテクノロジーの活用といった、より幅広いオムニチャネルのアプローチにまで及ぶ。ユーロモニターインターナショナルのPassportデータベースからコンシューマーヘルス業界のデータを見ると、同業界におけるEコマースの売上は2020年、世界的に成長した。この傾向は2021年も続き、4%増加している。そうした中で、ブランドや企業は消費者とのつながりを深めるためにテクノロジーを取り入れようとしている。例えば、Procter & Gamble(プロクター・アンド・ギャンブル)の「Vicks」米国サイトでは、年齢や症状など様々な要素に基づいた製品を消費者におすすめしている。
パーソナライゼーションの一般化
消費者は、個々の身体が違うこと、健康関連製品に対する反応も、人によって異なる可能性があることを認識しつつあり、個人特有の健康や優先事項のニーズに合った製品を求めている。このことから、パーソナライゼーションの一般化が進んでいる。ユーロモニターインターナショナルの「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」(2021年)では、回答者の51%が「自分に合った製品やサービスを求めている」と答えている。異なる仕組みや手法を使い、消費者それぞれの健康に対するニーズに直接働きかけられるような製品が続々と登場している。最近ではHUM Nutrition、Ritual、Care/of、Nurish by Nature Made、Get Romanなどの企業が、パーソナライゼーションによって成功を収めている。
ホリスティックなサステナビリティ
目的主導型のブランドや企業は消費者とより深く関わろうとするため、ホリスティックなサステナビリティは、包括的なコンシューマーヘルスの一部として注目されつつある。ユーロモニターインターナショナルが2021年6月に実施した「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:サステナビリティサーベイ」によると、業界関係者の53%が「目的主導型であることが企業理念の重点のひとつである」と回答している。そのため、企業はブランド戦略の一環としてホリスティックなサステナビリティに重点を置き、より良い健康やウェルビーイングに関係する要素として、目的のある生き方や、環境スチュワードシップなどのテーマに注目している。消費者が環境フットプリントをより意識するようになる中、ネスレ、プロクター・アンド・ギャンブル、バイエル、グラクソ・スミスクラインといったコンシューマーヘルス関連企業は、今後もこの傾向が続くと考え、将来の目標に重きを置いたサステナビリティレポートを発表している。
また、本レポートでは、ウェルネス、OTC医薬品、ビタミン剤・栄養補助食品、スポーツ栄養食品、ダイエット関連食品、ウェルビーイングといった分野について、大手企業が成長を加速するために、どのようにして専門化、製品イノベーション、買収に戦略的に重点を置いて取り組んでいるのか、様々なケーススタディと共に紹介している。
より詳細な情報は、レポート『Competitive Strategies in Consumer Health』(有料)をご覧ください。
(翻訳:横山雅子)