この1年半、消費者のニーズや嗜好はかつてないほど進化し、多くの企業は対応に追われながらもイノベーションに注力してきた。この流れについていくには、それら変化を注意深く観察し、新たな商機を見逃さないように努めるほかない。
ユーロモニターは、本日発表のレポート『2022年 世界の消費者トレンドTOP10』において、2022年により勢いを増すと予想される消費者行動を特定し、企業が新たな製品・サービスやビジネスモデルを形成していくための提言を行っている。
2022年、ビジネス戦略の指針となるトレンドは以下の通りである:
1. バックアッププランナー:サプライチェーンの混乱の経験から、 次善の策を考えるようになる
「バックアッププランナー」とは、お気に入りの製品やサービスを入手することが困難になった場合に、それらの類似品を購入する方法を探したり、代替となるものを手に入れるためにクリエイティブな解決策を見つけようとする消費者のことである。
供給不足が発生する中にあっても、企業は柔軟に対応し、新たなソリューションを用いて顧客の手元に製品やサービスを届けなければならない。企業や流通業者はデータを活用し、サプライチェーンの可視性や運用能力を高めたり、資金の使いどころを見直す必要がある。
2. 気候変動に敏感な消費者:低炭素社会の実現
環境活動と低炭素型ライフスタイルは、今後も世の中に定着していくだろう。気候変動問題への懸念が高まる中、消費者は、企業やブランドが環境問題への取り組みを強化することに期待すると同時に、自身も購入する製品を通して行動を起こそうとしている。
世界の業界関係者の78%が、「気候変動は、消費者の行動、ニーズ、嗜好に変化をもたらし、消費者の需要に影響を及ぼす」と回答
企業が「気候変動に敏感な消費者」を取り込むためには、カーボンフットプリントの削減に努め、その期待に応えられるような製品やサービスを開発・発売していく必要がある。
3. デジタルシニア:抵抗から信頼へ
新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの影響により、シニア層はデジタル世界がもたらす恩恵に関心を持つようになった。今では、テクノロジーに慣れ親しんだ「デジタルシニア」による、オンラインチャネルを使ったショッピングやサービスの利用が増加している。
企業はシニア層のニーズに応えるために、操作方法が簡単なデバイスの開発や、既存テクノロジーの簡素化に取り組む必要がある。デジタルソリューションがシニア層に受け入れられるためには、スムーズでストレスを感じずに利用できるような、分かりやすいものでなければならない。製品やサービスを使いにくいと感じたら、彼らは競合他社に乗り換えてしまうだろう。
4. 資産管理マニア:資産運用の一般化
人々は資産運用に自信を持つようになりつつあり、経済的な安定を求めて熱心に貯蓄に励んでいる。「資産管理マニア」とは、自分のお金を管理し、様々なサービスを利用して自身の取引を確認する消費者のことである。
小売企業やブランドは、金融サービスプロバイダーと協力し、暗号通貨やBNPL(Buy Now Pay Later:今買って後で支払う)決済など、代替決済の導入を進め、買い物客のニーズに合わせた購買体験を提供していくことが求められている。
5. 人生を大きく見直す:「情熱」と「目的」が行動を促す
パンデミックを機に、思い切った自己変革をしたり、価値観や生活スタイルそして人生の目標を包括的に考え直す動きが広まった。事実、昨年は多くの人が退職した。
企業はこの一世代に一度あるかないかという節目に対応すべく、提供する製品、サービス、体験を刷新すると共に、激動する世界を認識し、受け入れたうえでマーケティングを行うべきである。
6. メタバースへの移行:未来の3Dデジタルエコシステム
2021年は、物理的な現実世界と仮想空間の融合がトレンドのひとつであった。今やデジタル世界は、バーチャルな社交の場から没入型の3D仮想空間へと進化している。消費者は、これらのデジタル空間を利用し、様々なコミュニティの中で交流するようになっている。
Gucci(グッチ)やFacebook(フェイスブック、現Meta(メタ))などのブランドや企業は、既に「メタバースへの移行」に投資し始めている。2022年、企業はこの新たなデジタルエコシステムで大きな資産を築き、今後利用者が拡大する中で、Eコマースやバーチャル製品の売上をさらに伸ばしていくだろう。
7. ユーズド品愛好家:セカンドハンド、リコマース、ピアツーピア(P2P)のマーケットプレイス
倹約することはもはや大きなトレンドであり、消費者も「所有する」ことから「体験する」ことに重きを置くようになった。サステナブルかつ他の人とは違うという点が、ユーズド品にまつわるマイナスイメージを払拭し、P2Pコマースを促進している。
世界の消費者の33%が、「少なくとも数か月に1回はユーズド品を購入する」と回答
企業はより少ない資源でより多くを行わなければならない。リサイクル、レンタル、転売プログラムといったサーキュラーエコノミー(循環型経済)への投資は、価値を生み出すと同時に、環境にポジティブな影響をもたらす。
8. 地方と都会のいいとこ取り:両方のメリットを楽しむ
2021年、消費者は屋外に憩いを求め、広い居住環境や豊かな自然を探して一時的に地方に暮らしを移すようになった。そして今、この流れは恒久的なものになりつつある。ただし、全ての消費者が都市生活を諦めているわけではなく、このような郊外・地方のメリットを、都市部に住みながら楽しみたいと考える消費者もいる。
今後は、屋内農業や屋上庭園など、持続可能な取り組みを都市部に取り入れることが、「地方と都会のいいとこ取り」を求める消費者の共感を得ることに繋がっていく。Eコマース周りの流通を強化し、サステナブルな製品ラインナップを拡大させるなど、「地方と都会のいいとこ取り」を求める消費者に対応していく企業が生き残っていくだろう。
9. 自分らしさを愛する:他の誰でもない「自分」を大切にすることで幸せに
今日、消費者ライフスタイルの最前線にあるのが、「受容」、「セルフケア」、そして多様性や個性を尊重し協働する「インクルージョン」といった考え方である。「自分らしさを愛する」消費者たちは、自分が幸せに感じる感覚や、ありのままの姿でいて心地よいと感じることに重きを置き、自分らしさを高めてくれる製品やサービスを楽しむ傾向がある。
企業にとっては、消費者がそれらを叶えられるようにサポートし、彼らの優先事項を理解してイノベーションに繋げることが大切となる。消費者が充実感を感じ、前向きな気持ちになったり、自己肯定感を持てるようになることを促す製品やサービスを提供することが、ブランドの認知拡大を後押しするだろう。
10. 社会活動再開への温度差:パンデミック前の生活に戻るには、それぞれのタイミングがある
世の中はパンデミック前の日常に戻りつつあるが、それに対して消費者が抱く安心感の度合いはまちまちだ。以前の生活活動を取り戻すことを切望している人もいれば、躊躇している人もおり、「社会活動再開への温度差」が生まれている。
2021年、世界の消費者の76%が「外出時には健康と安全のための注意を払った」と回答
企業は、人によって安心感の度合いが異なることを考慮しなければならない。消費者は利便性や安全性を求めてオンラインで買い物する一方で、人と人との間に意味のある繋がりも求めている。消費者のニューノーマルに対応するためには、複合的なアプローチを用いることが不可欠となる。
2022年のトレンドをより詳しく知るには?
これら10の消費者トレンドによってビジネス環境は再び変容していく。これらの新しい変化を自社戦略に反映させることができる企業が、他社の一歩先を行き、2022年に成功を収めるだろう。
トレンドの詳細、ケーススタディ、戦略的提言については、レポート『2022年 世界の消費者トレンドTOP10』(日本語版)にてご確認ください。
また、2月24日(木)日本時間18時より、本レポートに関するウェビナー(英語)を開催する予定です。同ウェビナーでは、本レポートの執筆に携わったユーロモニターの業界エキスパートが皆様が抱かれるであろう疑問にお答えします。当日のご参加が難しい場合も、開催日以降に録画版をご覧頂けますので、まずはこちらよりご登録ください。