今日の消費者の間では、「サステナブルな生活を送りたい」、「自給自足に近づきたい」、といったニーズがますます高まっている。
2021年には、世界の消費者の3分の1が積極的にCO2排出量を削減し、4分の1がカーボンオフセットによって排出量の埋め合わせに努めていると回答している。
環境問題に対する不安から、消費者は自分が排出する二酸化炭素排出量をコントロールする方法を模索するようになった。今年、注目すべきは、若者を中心とした比較的裕福な、気候変動に対して意識の高い消費者層である。
本記事では、サステナビリティをテーマに、『2022年 世界の消費者トレンドTOP10』の中から3つのトレンド、「気候変動に敏感な消費者」、「ユーズド品愛好家」、「地方と都会のいいとこ取り」を取り上げて紹介する。
思いを行動に移す「気候変動に敏感な消費者」
気候変動問題への懸念が高まる中、消費者は企業やブランドが環境に配慮したサステナブルな取り組みを強化することを期待するだけでなく、自身も購入する製品を通して行動を起こしている。 グリーン・アクティビズム(積極的な環境活動)と低炭素型ライフスタイルは、今後も世の中に定着していくだろう。
ユーロモニターの『ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ』調査によると、世界の消費者は、気候変動が自身の生活に影響をもたらすであろうことを認識している。また、買い物をする際は、自分の価値観に合致するブランドや企業の商品を選んで購入するようになっている。
気候変動に対する意識が高い消費者グループは、気候変動に対する意識と、実際の行動のギャップが非常に小さい。事実、「気候変動による影響を憂慮している」と回答した消費者とほぼ同数が、「日々の行動を通じて環境にいい影響をもたらそうとしている」と回答している。
「気候変動に敏感な消費者」に選ばれているのは、低炭素を実現し、透明性の高いサプライチェーンで製造された製品である。そのような低カーボンフットプリント製品を市場に投入し、包装ラベルでの訴求を強化する企業やブランドが増えている。
気候変動が自給自足へのニーズを促す
「気候変動に敏感な消費者」は、自身が地球に与える影響を抑えるべく消費に慎重な姿勢を取っており、それが企業に新たな商機をもたらしている。
このような消費者は、環境負荷を最小限に抑えた住居や、自宅から職場、買い物や娯楽に自転車や徒歩で15分以内にアクセスできる「15分都市」を選ぶようになっている。
また、環境に配慮した生活を送る消費者は、より健康的で地球に優しい食事を摂るようになっている。オーガニック加工食品は、健康・ウェルネスの分野で最も成長している製品カテゴリーのひとつだ。
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下において、消費者の新たな趣味として家庭園芸の人気が高まった。都市部・地方部のどちらに住んでいるかにかかわらず、自宅のバルコニーや広い土地を活用して園芸を楽しむといった「地方と都会のいいとこ取り」トレンドは、今後も継続するだろう。
サステナビリティと値ごろ感が掛け合わさった「ユーズド品愛好家」と「地方と都会のいいとこ取り」トレンド
環境に優しい製品は一般的な製品と比べて高額なため、消費者は安さをとるか、サステナブルであることをとるかの選択を迫られる。パンデミックによって可処分所得が減少したこともあり、人々は節約するために中古品などの代替品を探すようになった。
消費者が生態系に配慮するようになると同時に、価格にも敏感になっている背景から、中古品へのマイナスイメージが薄まりつつある。そして、人々の間でより一般的な選択肢になるにつれ、中古品に対する考え方が変わり始めている。スリフティング(中古品販売店などでアイテムを購入すること)というコンセプトはアパレル業界から広がり、今や家具など様々なカテゴリーでも見られるようになった。テクノロジーに精通し、持続可能性を重視している若い世代の消費者が、「ユーズド品愛好家」トレンドをいち早く取り入れている。
また、より多くの人がリモートワークを選択できるようになったことで、「地方と都会のいいとこ取り」をしたい消費者の中には、より広い住居や豊かな自然を求めて一時的に郊外に移住した人もいる。そして現在、この動きは恒久的なものになりつつあり、都市部以外における不動産需要(賃貸・購入いずれも含む)が大幅に増加している。
しかし、全ての「地方と都会のいいとこ取り」を求める消費者が都市部での生活を諦めたわけではない。彼らは地方ならではのシンプルな暮らしの要素を都市部での生活に取り入れようと、様々な方法を探している。
「気候変動に敏感な消費者」、「地方と都会のいいとこ取り」、「ユーズド品愛好家」トレンドに対応するためのビジネス戦略とは
「気候変動に敏感な消費者」、「地方と都会のいいとこ取り」、「ユーズド品愛好家」という消費者トレンドに対応するために、企業やブランドは、サステナビリティと環境活動に積極的に取り組む姿勢を自社戦略に組み込む必要がある。
今後は、カーボンフットプリント(CFP)認証やグリーンラベルを取得・表示した製品のラインナップを増やし、消費者が家庭内で気候変動対策の一端を担うことができるような革新的なソリューションを提供することができる企業が成功するだろう。
一方で、Eコマースの拡大は、企業の増収維持に加え、大都市から地方または郊外に移住しつつも、都市部での便利な生活スタイルを維持したいと考える、「地方と都会のいいとこ取り」をしたい消費者のロイヤルティを維持するためにも不可欠である。
循環型経済モデルは今後さらに重要視されていくだろう。リサイクルやレンタル、転売、自社製品を買い取り再販売するバイバックプログラムなどは、消費者にとって気候変動対策に貢献できるチャンスであるとともに、企業にとっても競争優位性をもたらすものとなっている。
企業はこれらのトレンドの一歩先をゆき、サステナブルなブランドとしてのポジショニングを獲得し、環境問題に積極的に取り組む姿勢を示していく必要がある。
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