パンデミックの発生により世界中の人々が自粛生活を余儀なくされた2020年、老若男女問わず、人々は必然的に生活の中にオンラインを取り入れることとなった。翌2021年には、パンデミックによって生まれた新たな習慣やソーシャルディスタンスの規制により、若者からシニア層まで、あらゆる世代でデジタル機器の使用がさらに進み、物理的な現実世界とデジタル世界の融合を後押しした。
そして2022年に突入した今、消費者はメタバースへの移行を加速させており、人々が同時に参加・共有できる3D仮想空間を特徴とした、未来のインターネット開発が急速に進んでいる。
2Dデジタルプラットフォームから3Dバーチャル環境へと、インターネットの進化を牽引しているのは、TikTok(ティックトック)やRoblox(ロブロックス)といった、デジタルネイティブな消費者の間で人気を集めるライブストリーミングやゲーミングネットワークである。
ただし、メタバースに移行しているのは若い世代だけではない。60歳以上のデジタルシニアたちもまた、デジタルプラットフォームを通じて、自分たちのコミュニティやより広い世界との繋がり方を学んできた。その結果、そのようなシニア層の消費者もEコマースで買い物をしたり、オンライン上で人と交流する自信をつけ、若い世代に交じってメタバースへ移行しようとしている。
メタバースの成長が消費者にもたらす恩恵
「デジタルシニア」たちは、デジタルプラットフォーム上でどのような恩恵を受けられるかを探し続けている。彼らの多くは、デジタルネイティブの孫世代からの影響やサポートを受けつつ、SNSやオンラインビデオゲーム、YouTube(ユーチューブ)の「ハウツー(How To)動画」などを通じて、オンラインでの交流を楽しむようになった。さらに、日々の様々な用事を円滑に進めるために、ウェアラブル技術や家庭用のハイテク電子機器を活用している人もいる。
「デジタルシニア」の中でも最もテクノロジーに精通した人々は、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)機器を装着し、進化するメタバースの世界の中で、ブランドや企業、孫、そして他の人と関わりを持つようになっている。
このような背景から、シニア層をターゲットとしたVR企業が台頭してきている。例えば、米国に拠点を置くRendever(レンデバー)は、高齢者施設にVR機器を提供し、施設利用者が没入型のバーチャルエンターテインメントや旅行体験を楽しめるサービスを提供している。
ブランドが仮想世界に価値を見出すためには
高所得者層(25万米ドル超)の4分の1近くを60歳以上の消費者が占めるなど、シニア層は 企業にとって重要なターゲットである。一方、現在20歳から24歳の消費者層は、2040年までに最も収入が増えると見込まれており、今後のデジタル消費を牽引する世代である。
企業は、このように幅広い世代に跨る裕福なデジタル消費者たちを取り込むべく、バーチャル上の製品や体験だけでなく、物理的なハードウェア製品も彼らに合わせて最適化していく必要があるだろう。
2021年、ほぼ毎日行ったアクティビティは…
Source: Euromonitor International Voice of the Consumer: Lifestyles Survey
ブランドや企業は新たな購買層を獲得すべく、オンラインゲームやSNSに注目しており、ゲームの中で消費者と繋がろうとしている。多くの企業は広告にお金をかけており、画面上のヘッダー近くにあるビルボードや、小道具や背景として企業名を登場させるプロダクトプレイスメント、その他にも没入型のデジタル環境における様々な広告スペースを購入している。さらには、非代替性トークン(NFT)などの完全なバーチャル製品を提供する企業も出てきている。
2021年には、Gucci(グッチ)やVans(ヴァンズ)など、ファッションや高級品ブランドがオンラインゲームプラットフォームのロブロックスと提携した。同プラットフォームには4700万人ものアクティブユーザーがおり、ブランドはこれらユーザーのアバター向けにバーチャル製品を販売する他、ユーザーがアバターを通して見て回ったり、集まったり、交流することができるデジタル空間を提供するなど、新しい方法で消費者と繋がろうとしている。
こうした先駆的な取り組みを通じて、ブランド・企業は、バーチャルゲームの世界を開拓しているインフルエンサーとの間で自社のブランドエクイティを築くことができる。同時に、企業はメタバースの中で自社ブランドを最適に表現するべく、物理的な世界で実現していた交流や感情的な部分をいかに仮想空間で再現するか、その方法を模索している。
AR/VRを利用してゲームに参加したことがあると答えた回答者の割合(2021年)
Source: Euromonitor International Voice of the Consumer: Digital Survey 2021
「デジタルシニア」と「メタバースへの移行」トレンドの次なる展開とは
今後、AR/VRの性能が向上し、ハードウェアの価格が下がってくれば、あらゆる年齢層の消費者がメタバースを利用しやすくなるだろう。既にオンライン上での交流を快適に感じている消費者は、没入感のある3D社交環境で過ごす時間がさらに増えると考えられる。また、高齢者や身体的障がいのある消費者層が日常生活を送る際にも、これらの機器が役に立つようになるだろう。
企業は、ターゲット層を戦略の中心に据えてメタバースに取り組まなければならない。それができれば、物理的な世界でもバーチャルの世界でも、自社のブランドエクイティを構築し、収益を大きく伸ばすことができるだろう。
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