※本記事は英語でもご覧頂けます:Top Five Global Trends in Households
グローバル企業は、今なお新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが引き起こしている先行き不透明感や様々な課題に直面し続けており、これからの企業戦略の策定には、世帯に関する動向の本質を理解することが極めて重要となる。ユーロモニターインターナショナルは、企業が消費者プロファイルやニーズの変化に対応し、ビジネスチャンスを見出すために役立つ5つのトレンドを特定した。
在宅勤務が新たな常態(ニューノーマル)に
在宅勤務はCOVID-19以前より広まりつつあったが、企業はパンデミックの発生によって本格的にリモートワーク体制を取ることを余儀なくされた。しかし、これによる生産性の低下は当初懸念されていたほどではなかった。このことから、COVID-19に関する規制が解除された後も、在宅勤務は拡大していくことが予想される。
COVID-19によって、多くの消費財・サービス企業はイノベーションパイプラインを進めることを延期し、事業計画に重点を移さなければならなかった。しかし、在宅勤務が継続される中、それに関する様々な新しい消費者ニーズが生じていることは明らかである。そうしたニーズに対しては、既存のウェブサイトやアプリでは部分的にしか(あるいはほとんど)対応できないため、革新的な製品開発が必要になるだろう。
長期的に、消費者および企業のいずれもが優先事項やお金の使いどころを見直していく中、在宅勤務の広がりが大きな変化をもたらす可能性がある。特に人口密度が高い都市部に関連するビジネスや人々は、在宅勤務の普及による影響を受けやすいだろう。
パンデミックで加速したホームテインメント
COVID-19の影響により、ホームテインメント(ホームとエンターテインメントを掛け合わせた造語)のトレンドが加速している。人々は、外出先での体験を自宅で楽しむためのテクノロジーや機材に使うお金を増やしている。
ホームテインメントのトレンドは、消費者がロックダウンや外出自粛のために自宅で過ごす時間が増えたことで、インターネットへ加入した世帯数が増えたり、世界中でスマート機器や電子機器全般を所有する人々が増えたことによってさらに促進された。今後は、家庭内での消費状況から得られるデータやインサイトを活用し、新製品そして今まで以上に楽しい「おうち体験」を提供できるブランドや企業が、この分野を牽引していくだろう。
在宅学習が主流に
COVID-19のパンデミックにより、家庭でのオンライン学習の利用者がかつてないほど増加した。広範囲にわたる学校閉鎖により、何百万人もの学生や教育者がデジタル学習管理システムや大規模公開オンライン講座(MOOC)のプラットフォームなどの教育テクノロジー(EdTech、以下「エドテック」とする)に頼らざるを得なくなった。
その結果、エドテック企業は投資家の間で人気を博し、この1年間で飛躍的な成長を遂げた。例えば、EdSurgeによると、米国のエドテックスタートアップ企業が取り付けた投資額は、2019年には17億米ドルだったのに対し、2020年には約22億米ドル相当となっている。
世界中の教育関係者は、テクノロジーを利用して人々が教育を受けられる機会を増やそうとしている。また、教育機関においては、人工知能(AI)やビッグデータなどのテクノロジーを組み合わせ、従来の教育方法を変えたり、学生同士が協力して作業することを促したり、パーソナライズ化された教育体験を提供したり、学習成果を向上させたりするといった動きが活発化している。
年代別「教育」もしくは「新たなテクノロジー」に対する支出を増やそうと考えていると回答した消費者の割合(2021年)
Source: Euromonitor International’s Voice of the Consumer: Lifestyles Survey, 2021
消費者の間で人気を博すウェルネス関連テクノロジー
ウェルネス関連のテクノロジーには、アプリ、ウェアラブル機器、オンライン診療(バーチャルケア)、チャットボットなどがあり、自宅で過ごすことの多い消費者の利用が増加している。COVID-19のパンデミックが発生する前からすでに流行の兆しが見られていたこのトレンドは、テクノロジーに精通し、利便性やカスタマイズされた体験に価値を置いているミレニアル世代やZ世代などの若い世代が中心となって推し進めている。
テクノロジーは、利用しやすさや値ごろ感を改善することで、従来のケアモデルのあり方を変えようとしている。今日、消費者が自らの健康とウェルネスを管理し、それぞれが目標とするウェルネスを目指すためのホリスティックなアプローチの一部として、テクノロジーは不可欠な要素となっている。
人々はパンデミック期間を通じてテクノロジーに慣れ親しむようになり、高齢者層にもデジタルを導入する動きが加速した。加えて、ヘルスケアやセルフケアへの需要が高まっていることから、自宅で利用できるデジタルウェルネス製品・サービスに大きなチャンスが生まれている。とはいえ、デジタルデバイド(情報格差)、プライバシーやセキュリティへの懸念は、デジタルの導入を進めるうえで今なお大きな障害となっている。
消費者が最も快適と感じる健康に関するテクノロジーTOP5(2021年)
下記項目について「非常に快適(Extremely comfortable)」「とても快適(Very comfortable)」を選択した世界の消費者の割合
Source: Euromonitor International Health and Nutrition Survey, 2021 (fielded in February 2021)
都市部の世帯数増加に伴い、郊外部の世帯数も急増
世界的に都市部の世帯数が急速に拡大し続ける中で、郊外でも同等レベルの増加が見られている。COVID-19の影響により、都市部の世帯数増加率は一時的に鈍化する可能性があるものの、パンデミックが収束に向かう中で今後も増加し続けると思われる。世界的に見て、都市部の世帯数は2020年から2040年にかけて36%拡大すると予測されている。
快適性、エコロジー、不動産価格などの観点から、都市部よりも郊外や衛星都市を自らの住居地に選ぶ人々が増えており、この傾向は、世界的にも先進国、途上国を問わず同様である。仕事をはじめ、様々なアクティビティが遠隔で行えるようになったことから、人々はあえて都市部に住む必要性を感じなくなっている。ショッピングセンターやハイテク企業、小売業者は、こうした新たなエコシステムの発展を踏まえた上で事業展開を考えていく必要がある。
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(翻訳:横山雅子)