※本記事は英語でもご覧頂けます:Waterless Beauty: Opportunities Beyond Compliance
近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)が注目を集める中、多くの企業が「E」、つまり環境問題に重点を置いており、世界の業界関係者の実に54%が、環境問題をサステナビリティにおける最も重要な側面だと位置付けている。
ユーロモニターインターナショナルの最近の調査によると、ビジネスの成功には、情報に基づきサステナビリティに関する意思決定を行うことが不可欠である。どの業界も、調達、製造、販売する市場によって異なる特有の環境課題や機会がある。ユーロモニターは、様々な視点や多国間を横断的に比較可能なフレームワークおよび分析を提供し、企業がESGのトレンドや優先事項を特定したり、消費者センチメントを評価することで、他社の一歩先を行くためのサポートをしている。
ESGのうち、ビジネスにとってより重要な要素は何ですか?
水不足に立ち向かう「ウォーターレスビューティー」のビジネスチャンス
水不足に対する懸念は世界的に強まっており、今後5年間は、優先すべき10の環境問題のひとつであり続けるだろう。2022年に実施した「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:サステナビリティサーベイ」によると、世界の業界関係者の56%以上が「今後5年間に水資源に関する取り組みに投資する予定がある」と回答しており、2019年の39.3%より増加した。また、世界の消費者の44%以上が「地球への良い影響を考え節水を心がけている」と回答している(「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」(2021年))。
今後5年間に予定しているサステナビリティ関連投資(2022年)
ビューティー・パーソナルケア業界は、水を大量に使用し、水質汚染をもたらし、廃水が多い業界として挙げられることが多い。水はビューティー・パーソナルケア製品にとって重要な成分であり、2020年には世界で1,040万トンの水を消費している。その中でもヘアケア製品とバス・シャワー用品で使用される水の量は、ビューティー・パーソナルケア製品全体で使用される水の総量の半分以上を占める。
水セキュリティが企業のサステナビリティの課題として重要視されつつある中、ビューティー・パーソナルケア企業に対しても、規制基準を遵守するだけでなく、以下のような取り組みを積極的に行うことが強く求められるようになっている。
- 水不足対策に関するソリューションの優先化
- ウォーターレスや節水を求める消費者のニーズに対応した製品ポートフォリオへの変更
- 同業他社の水資源に関するサステナビリティの取り組みを確認しつつ、自社のサステナビリティ活動がステークホルダーにもたらすであろうメリットを検証する
企業は、ユーロモニターインターナショナルの環境評価基準と、消費者サーベイや「サステナブル・リビング訴求トラッカー」によるSKU(在庫管理単位)レベルのデータを組み合わせることで、節水のソリューションを必要としている市場を特定し、ウォーターレスや節水を訴求した製品により適したビジネス機会を見つけることができる。
各国の水不足の深刻さの度合い(横軸)、各国で節水のために行動している消費者の割合(縦軸)、ウォーターレスや節水を謳った製品(SKU)の多さ(バブルの円)
- カナダは、水不足の深刻さに関しては最も低いレベルにあるにもかかわらず、水セキュリティが比較的低い。これは、世界的な気温上昇によって氷河が溶け、河川の流量がますます予測不可能になり、温暖化した湖が有毒藻類と戦っているためである。カナダでは、ウォーターレスや節水の特性を持つSKU数は多いものの、節水を心がける消費者の割合は世界平均を下回っており、企業は消費者を啓発し需要を高めるためのコミュニケーションに力を入れる必要があることを示している。
- ブラジルは水不足の深刻度が低く、ウォーターレスや節水の特性を持つ製品への消費者ニーズも高くなっているが、バブルチャートの円が小さいことから、そのような製品が市場にあまり出回っていないことがわかる。
- UAEは高価な海水淡水化技術への依存度が高く、水不足が最も深刻な国のひとつである。それにもかかわらず、節水やウォーターレスの特性を持つ製品の数は極めて少なく、消費者ニーズも低い。このことから今後、消費者を啓発しつつ、より多くの水不足の懸念を訴えるビューティー・パーソナルケア製品の発売を検討している企業にとっては、長期的な商機をもたらすだろう。
- 現在、ウォーターレスや節水の特性を持つ製品の商機は、メキシコ、トルコ、スペイン、南アフリカといった、水不足の問題がより深刻で、そうした製品に対する消費者ニーズが高いものの、それら製品がまだ市場に少ない国々にあるといえるだろう。
企業のESGに対するニーズをサポートする、データに基づく考察と試行を重ねたソリューション
ユーロモニターの世界および地域レベルの業界エキスパートのネットワークと十分に試行を重ねた独自の手法とを組み合わせることで、企業は、国ごとに最も重要なESG課題を特定、比較、順位付けし、ESG課題に対する消費者の関心が高い分野を把握するとともに、他社の製品訴求からESGの取り組みにどのようにアプローチしているかを比較することができる。
さらに詳しく
ユーロモニターインターナショナルは、独自の指標である「環境サステナビリティインデックス」を活用した「環境サステナビリティダッシュボード」を提供している。210か国にわたり環境に関する650の様々な指数を視覚的に表示しており、ユーザーはこれらのデータからESGのトレンドと機会を探ることができる。
また、同社の「サステナブル・リビング訴求トラッカー」は、40か国、1,500のオンライン小売業者、11の消費財産業にわたり、持続可能性に関連する訴求やその他の特性を持つ製品を含む、Eコマース販売における数百万のSKUを監視し、標準化したオンライン製品カバレッジにより重要な戦略・戦術的洞察を解き明かすサポートをしている。
「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:サステナビリティサーベイ」は、ユーロモニターが年に一度、オンラインで実施する調査であり、消費財業界の業界関係者1,500人以上からサステナビリティに関する見解を集計し、経時的に追跡することで、競合他社の戦略や業界のサステナビリティ動向を理解できるようにするものである。
サステナビリティのトレンドが自社の事業や製品分野にどのような影響をもたらすかについて詳細な調査にご興味のある方は、こちらまでお問い合わせください。
(翻訳:横山雅子)