急速なインフレの高まりや物価の高騰が消費者の裁量的支出を圧迫する中、コト消費は変化を余儀なくされている。しかし、リアルやメタバースというチャネルにこだわらず、人々のコト消費に対する需要は依然として高い。
ブランドは「レス・イズ・モア(少なくすることでより多くを得る)」アプローチを採用し、余分なオプションを省いたり、利用のハードルを下げたりすることで、ブランド体験をすべての消費者にとって包括的かつ魅力的なものにすることが可能となり、消費者と長期的なつながりを築く新たなチャンスを掴むことができる。
コト消費における「レス・イズ・モア」
「レス・イズ・モア」な体験には様々な側面がある。例えば、食品やエネルギー価格の高騰による消費者の節約へのプレッシャーや、家庭と職場の境界線があいまいな新しい働き方によって生まれた時間的なプレッシャーへの対抗など、コストと時間の削減は、大きな課題である。また、ブランドが原点に立ち返り、自分たちの価値を見直し、何が自分たちをユニークな存在にしているのかに焦点を当てた結果、デザインの簡素化を図る動きも顕著になっている。
さらに、ブランドは、商品の合理化と簡素化を図り、消費者とより密接につながるために、選択肢の削減を推し進めている。メタバースのような新しい体験チャネルは、消費者の利用に対するハードルを引き下げに努め、不安感を減らすとともに、多様性と包括性を歓迎・促進している。消費者は楽しい体験を追及し続けることから、いつまでも「以前と同じやり方」では通用しない。コト消費の在り方が変化している今こそが、ブランドを刷新するベストなタイミングなのである。
没入型、機能の強化、ポジティブな影響がもたらす、製品の高付加価値化
AR/VRのような新しいテクノロジーの普及が進むと、消費者は製品やサービスをより没入感をもって利用することが可能となり、それがブランドとの関係性をより深めることにつながる。ただし、ブランドはデジタルなストーリーを取り入れ、#IRL(リアル)では実現できない包括的な体験をバーチャルな世界で作り出さなければならない。特に、利用にあたってのフィルターや障壁の少ないメタバースで、自社製品やサービスと消費者との近未来的な関わり方を作り上げる必要がある。
実際にAR/VR、さらにはMR(複合現実)などの没入型技術は、以前にも増して消費者の日常生活へ深く浸透しつつある。事実、2022年にはミレニアル世代の79.9%がこうした技術を使用したゲームをすでにプレイした経験を持つ。また、2022年には、世界の消費者の38.6%が、現実世界では味わえないユニークなバーチャル体験に強い関心を示している。ブランドにとっては、如何にして独自の価値と強みを持つ、他にはない特別なバーチャル体験を作り上げることができるかが、こうした消費者期待に応えるためのカギとなる。
出所:ユーロモニターインターナショナル
一方、物理的な世界でブランドに必要とされるのは、消費者の時間やコストの削減である。また、環境への悪影響を軽減するために、製品やサービスの改良や、機能の強化を目指すことも重要である。特に、パンデミック後の供給不足に苦しみ、世界中がエネルギー、食料、商品の価格高騰に直面している現状では、こうした課題に対応するためにも「レス・イズ・モア」という考え方を取り入れる必要があるだろう。
時代とともに変化するコト消費の在り方
パンデミック以降、消費者のコト消費に対する欲求は、現実世界でも、バーチャルな世界においても、非常に高い水準で推移している。当面の最重要課題は、ブランド体験の低コスト化である。経済的・時間的なプレッシャーにさらされている消費者にとって、自由に使える予算が限られているからである。一方で、高級ブランドがメタバースと提携し、若い消費者にリーチしていることからも、「値段が安いと品質が悪い」と思われる懸念は無視してよいだろう。
また、AR/VRのような新しいテクノロジーは、消費者を取り込み、引きつけるためのストーリーに新鮮なアイディアと即時性をもたらすことから、今までにない商品やサービスを生み出すための開発を重ねることも重要である。
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