※本記事は英語でもご覧頂けます:New Consumer Landscape: Four Behaviour Shifts Shaping Business Strategies
パンデミック後の消費者環境は、生活の送り方、働き方、遊び方、買い物の方法といった行動様式が大きく変化したことで一変した。デジタル化が進んだ自宅中心のライフスタイル、社会および環境に対する責任への意識の高まり、価値重視の傾向といった主な消費者行動の変化は新たな消費者ニーズや優先順位を生み出し、企業は長期的に人々から支持され続けるために、戦略を見直さなくてはならなくなった。
長期的な消費を形成する主な消費者行動の変化
Source: Euromonitor International
すべてがデジタルへ
消費者がデジタルを活用したライフスタイルを受け入れるようになるにつれ、あらゆる業界の企業がデジタル化を加速させている。デジタル化とは、単にEコマースにとどまらず、革新的な技術を使って製品やサービスを向上させることも意味している。
- アパレル・フットウェア業界では、多くの小売業者がEコマース事業を強化し、シームレスな決済システムやバーチャル試着などで消費者のオンラインでの買い物体験を向上させる手段を模索している。
- 食品・ニュートリション業界では、消費者が買い物する場所が食料雑貨店からネットへと移るにつれ、企業は食品の衝動買いを促す方法を再考してきた。クイックコマース、すなわち、より短時間かつ速い手段で顧客の元へ配送するサービスは、料理配達サービスがそうであったように、消費者の期待値を高めている。2021年、欧州の企業Getir(ゲティル)とGorillas(ゴリラズ)は、「数分で」食料雑貨を配送できると謳って米国に進出を果たした。
- 一方で、ホームケア業界では、ロボットの自動化、スマートホームエコシステムの進化、より広範なスマートインフラといった技術開発が進んでいる。家庭におけるデジタル化は、音声認識や室内カメラなどを受け入れる家庭が増えるなど、消費者の意識が変化する中で加速している。
世界における一部のスマートワイヤレススピーカーの総売上台数(2017-2021年)
Source: Euromonitor International
自宅は安らぎの場所であり、様々な活動の拠点でもある
消費者は、自宅外での活動に対してため込んできたペントアップ需要の解放先を探しているが、より自宅を中心としたライフスタイルは、今後も定着すると考えられる。そのため、企業は自宅シーンに対応した製品・サービスの開発に取り組む必要がある。
- 消費者は、1年以上に渡り自宅中心の生活を送ったことで、多くの新たな習慣を身につけた。コロナ収束後、飲料業界のメーカーにとっては、そうした消費者とのつながりを継続するためにも、次世代の家庭用機器(飲料ディスペンサー、コーヒーメーカー、調理機器、インフューザーなど)が長期的な戦略において重要な要素となる。
- 食品業界では、消費者の食事の機会が中長期的に家庭へと移行することが、加工食品や菓子類の需要を後押しすると考えられる。また、外食や衝動買いのチャネルが再開し、自宅外での食事機会が活気を取り戻す中でも、自宅楽しめるレストラン品質の食事や贅沢なおやつといった家庭体験に対するニーズは高まりをみせるだろう。
- ホームケア業界は自宅のあり方が変わりつつある中で、その傾向に特にうまく対応してきた業界だといえる。在宅時間が長くなればなるほど、消費者は掃除をより頻繁に行うようになった。また、家事に費やす時間を補うための新たなサービスや技術への関心も高まっている。タスク自動化への移行はパンデミック以前から始まっており、今後も多くの市場でこの動きが加速されることが予想されている。
価値に重きを置く消費者
所得の伸び悩みと高インフレの時代にあって、消費者は限られた資金をこれまで以上に有効活用しなければならない。消費者を取り巻くこの新たな環境の中で、より重要視されているのは「価値」である。
- アルコール飲料業界では、所得の低下と失業率の上昇によりプレミアム化の人気が低下しつつある。社会、ショッピング、ホスピタリティ関連業界が活気を取り戻し、外食でのアルコール飲料の消費機会は増えているものの、外食の場合はコストが高くなりがちであるため、消費者は高価格帯の飲料製品を買い控えるようになっている。このような背景から、アルコール飲料業界は、プレミアム化からより細やかで多様な戦略へと、重点を移していくようになるだろう。
- ホームケア業界は、電気代と水道代の両方が上昇する中、中流家庭がより安い製品に買い替えたり節約したりすることが課題となっている。消費者の関心は、シンプルな固形石鹸やバケツの水など、いわゆる手洗いで使われるような基本的で低コストのクリーニング製品にシフトしており、これは業界にとっては、研究開発とイノベーションといった面では後退にもなりかねない。
- 消費者は、手頃な価格だけでなく、利便性や健康とウェルネスといった他の価値も求めている。例えば、食品・ニュートリション業界では、食べ物が自然のうちに健康増進や病気予防に役立つという点で消費者意識が高まっており、健康に関する訴求、特に免疫力の向上や気分転換、集中力を高めるといった訴求をした製品が増加している。
免疫系に関する健康訴求が多い加工食品カテゴリーとその成長率(2019-2020年)
Source: Euromonitor International
社会的・環境面における責任
消費者は環境問題に対してより意識するようになり、サステナビリティを目的とするブランドや企業を優先する傾向が強まっている。その結果、ブランドや企業の評判が、サステナビリティへの取り組みの重要な推進力のひとつとなっている。
- 例えば、アパレル・フットウェア業界の企業は、持続可能な調達、サプライチェーンの透明性、そして再販やレンタル、リジェネラティブ・ファッションなどでより循環性を高めることによる廃棄物の削減といった、ファッションが環境に与える影響を様々な角度から抑制するための努力や取り組みについて、積極的に発言するようになっている。
- 食品業界では、肉や乳製品の代替製品がより持続可能であると考えられていることから、関連する製品の開発・生産への投資が増えている。これには、植物性食品や実験室で培養された肉も含まれる。また、同業界では、需要と供給に対してよりローカルなアプローチをとるなど、より持続可能な農業および製造方法への移行が進んでいる。
- 企業は、社会的および環境面における責任をビジネスの中心に据えることで、より競争力を高めることができるだろう。これは、ビジネスをより持続可能なものにすると同時に、消費者の価値観に沿うことにもつながる。
より詳細な考察については、レポートNew Consumer Landscape: Rethinking Consumer Industries(有料)をご確認ください。
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(翻訳:横山雅子)