2022年が終わった。ユーロモニターインターナショナルでは、毎年年初に発行している『世界の消費者トレンド TOP10(Top 10 Global Consumer Trends、以下GCT)』 の2022年版で、10のトレンドをあげていた。そのうちの、3つのトレンドを通し、私が調査を担当している業界 - 家電や洗剤、家庭紙、家具や玩具・ゲームなど – の、2022年の日本市場を振り返ってみた。
Climate Changers (気候変動に敏感な消費者)
サステナビリティ関連のトレンドはGCTの定番だ。日本では、例えばソニーが2021年にプラントベースのサステナ素材を発表し、2022年には包装材でのプラスチック全廃を目指す姿勢が報道された。パナソニックも2022年に完全生分解性の高濃度セルロースファイバー成形材料を開発したと発表した。そもそも最終品だけを手がけているわけではない二社(グループ)だが、素材開発方面からも攻めているのが興味深い。三菱電機の技術を花王製品のプラスチックボトルのリサイクルに応用しようというコラボもあり、一概にプラスチックの削減や再利用といっても、エコシステムが大きいことを思わされた。
Financial Aficionados (資産管理マニア)
ウクライナ情勢によって、節約や投資などの積極的な資産管理は「せざるを得ない」状況になってしまった。国内での日用品を見ると、洗剤やおむつ(ベビー用も大人用も)ではシェアの高いメーカーがリードする形で4月以降、じわじわと値上げが進んだ。単純値上げではなく、価格据え置きで内容量を減らす形での事実上値上げ (Shrinkflation) やリニューアルに伴う価格リセット的な形での値上げが多かったのは日用品でのインフレの特徴かもしれない。より購買頻度の高い食品と比べても、小売りによる日用品への値上げへの渋り方は顕著で、他の産業と比べても今後の課題、あるいはビジネスチャンスになりそうだ。
Self-Love Seekers (自分らしさを愛する)
カプセルトイやポケモンカードなどのトレーディングカードゲームが好調だ。子どもだけでなく大人も自分のために購買し、遊んでいることが大きな背景の一つだ。その裏には、アニメやビデオゲームをもはや「悪」としない社会で育った子どもが親世代となり、自分のための玩具購入に抵抗のない「大人」が増えたということもあるかもしれない。こうなると、息の長いIP(Intellectual Property:知的財産)の価値がますます上がる。
「Self-Love Seekers (自分らしさを愛する)」でもう一つ挙げておきたいのは、男性用の美容家電だ。女性用ではドライヤーの高級化や美顔器などの美容家電のマーケット拡大が何年も見られてきた。その立役者の一社であるヤーマンから今年、男性用の電動シェーバーがでた。パナソニックが2020年からスキンケアシェーバーというコンセプトの製品を出していたが、ヤーマンの参入はインパクトが大きかった。化粧品では何年か前からメンズビューティーは叫ばれはじめ、徐々にトレンドの広がりが見られていた(と同僚から聞いた)が、家電にもそれが波及してきた。ブラウンからもヘッドを交換することでスキンケアが可能なシェーバー製品が出て、流れを感じる。
以上、2022年1月にユーロモニターインターナショナルが発表した『世界の消費者トレンドTOP10』の中から、3つを振り返った。日本でも10あるトレンドの内、いくつかは見られた、と言えるだろう。さて、2023年の世界の消費者トレンドはどうなるだろうか。ユーロモニターインターナショナルは、日本語・英語を含む5か国語で、2023年1月中旬に発行予定だ。2023年の、消費者にまつわるビジネスを考える一助になれば幸いである。
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