世界の美容・パーソナルケア市場は、2026年に6,698億米ドルへ達し、名目ベースで前年比6.1%の成長が見込まれている。
この成長の背景には、消費者の選択眼が一段と厳しくなっていることがある。一部カテゴリーでは購入量が減少している一方で、健康志向やクリーンビューティー、コミュニティとのつながりといった価値観に合致する商品への支出は維持、あるいは拡大している。
本記事では、2026年から2027年にかけて美容・パーソナルケア業界に影響を与える5つの主要トレンドを紹介する。
1. Longevity(ロンジェビティ):予防的ウェルネスへのシフト
ロンジェビティとは、単に寿命を延ばすことではなく、より長く健やかに生活することを意味する「健康寿命」を伸ばすことを目的とした、科学的根拠に基づいたライフスタイルアプローチを指す。
現在の美容消費者は、「健康であること」と「美しく見えること」を切り離して捉えなくなった。そのため、細胞レベルでの健やかさや長期的な活力をサポートする製品への関心が高まっている。
中でも、ヘアケアやスカルプケアはロンジェビティ市場において開拓余地の大きい領域として成長の可能性を秘めている。また、インナーケアやニュートリコスメティクスへの関心も高まり、従来のトピカル製品(外用タイプ製品)を超えて、体の内側からアプローチする美容提案が広がりつつある。
2026年から2027年にかけて、消費者の関心はエイジングサインを改善する「アンチエイジング」から、将来の健康や美しさを維持するための「予防ケア」へ移ると予測される。スキンケア製品、デバイス、インナーケア商品を問わず、あらゆる年代に向けてロンジェビティ価値をいかに訴求するかが、ブランドにとっての重要な課題となる。
2. Clean Reimagined(進化するクリーンビューティー):成分への信頼性が鍵に
クリーンビューティーは新たな局面を迎えた。
これまでの「○○不使用」を中心とした訴求から、成分そのものの品質や安全性、透明性を重視する考え方へと変化している。
消費者は、不安視される特定成分を使っていないことだけを訴求だけでは、その商品を選ぶ十分な理由になりにくい。第三者認証機関による認証や科学的検証など、客観的な裏付けが求められている。
パーソナルケアカテゴリーでは、デオドラントがクリーン訴求を牽引している。2026年には、世界のデオドラント商品の約3分の1がクリーン関連の訴求を行っており、その割合は機能性訴求と同水準に達している。
また、2026年10月17日までにすべての消費財へハラール認証取得を義務付けるインドネシアの規制変更のように、各国の制度整備もこうした流れを後押ししている。
今後のクリーンビューティーは、「避けるべき成分が入っていないこと」ではなく、「何によって消費者を守るのか」を証明できることが重要になるだろう。
3. Emotional Micro-indulgence(小さなご褒美消費):日常を彩るビューティー体験
ストレスの高まりや家計の負担増に加え、SNSの持つ拡散力が、小額でも高い満足感を得られる“マイクロインダルジェンス(小さな贅沢)”需要を後押ししている。
SNSがこの流れをさらに加速させている。消費者は、実際の使用感に優れているだけでなく、写真や動画でも魅力的に映る付加価値の高い商品を求めるようになった。さらに、そうした商品はコミュニティへの参加を促し、オンライン上での共感や信頼獲得にもつながっている。
その好例が、ペルーで実施されたCyzoneとDunkin' Donutsのコラボレーションだ。2025年10月に、対象店舗で購入した顧客にCyzoneのリップ製品を無料配布し、にじみにくい特長を訴求した。
この取り組みは2026年のバレンタインシーズンにも展開され、8,000本以上のリップスティックが配布されたほか、同年4月にはPinkberryとのコラボレーションも実施された。
コミュニティ性や共有体験、創造性、楽しさを重視するこうした施策は、美容との関わり方そのものに対する消費者の期待が依然として強いことを示している。
4. Scroll to Shop(スクロールから購入へ):ソーシャルコマースとAIが変える商品発見
美容商品の発見方法にも変化が表れており、ブランドや検索エンジンを起点とした商品探索に代わり、SNSアルゴリズムや生成AIによるレコメンドが消費者との接点を生み出し始めている。
中国では2026年第2四半期時点で、Douyinがシェア42%を獲得し、Tmallを上回る美容Eコマースプラットフォームとなった。また、2026年には世界全体の生成AIプラットフォーム経由でおこなわれる商品検索のうち、美容・パーソナルケア関連が約半数を占めている。
出所: ユーロモニターインターナショナル
従来の購買プロセスである「認知→比較検討→購入」という流れは、アルゴリズム主導の意思決定へと集約されつつある。
たとえば、Pinterest上で利用できるEstée Lauderの「Jo Malone London Scent Scanner」は、利用者のビジュアル嗜好から香りを提案する。また、中東地域ではChalhoub Groupが開発した生成AI美容アドバイザー「Layla AI」が展開されている。
2026年から2027年にかけて、美容ブランドの競争力は売り場の品揃えで決まるのではなく、アルゴリズム上でどれだけ選ばれるかによって左右されるようになるだろう。
5. Asian Wave(アジアンウェーブ):美容市場を牽引するアジアブランド
アジアにおける可処分所得向上と文化的影響力の拡大を背景に、K-Beauty、J-Beauty、C-Beautyは世界市場で存在感を高めている。
2025年には、アジア発ブランド全体の成長が非アジアブランドを上回り、一大エコシステムへと発展した。
PDRNや発酵由来成分といった独自の成分開発力に加え、科学的な信頼性と手頃な価格帯を両立させる商品設計が、プレミアムブランドやラグジュアリーブランド、欧米ブランドに対する競争力となっている。
2027年に向けて、アジア発のビューティーブランドは、特にスキンケア分野において、プレミアムブランドやラグジュアリーブランドへの挑戦を続ける見通しだ。健康との親和性を強みに、スキンケアの枠を超えたカテゴリーへの展開も進むと考えられる。
2026年から2027年への展望
今後、美容業界における競争の軸は、店頭での存在感だけではなく、健康・ウェルビーイング面でどのような価値を提供できるか、どれだけ信頼性を備えているか、そしてアルゴリズム上でどれだけ発見されやすいかへと広がっていく。
健康寿命を軸とした包括的な価値提案をおこない、効果を裏付ける根拠を示し、機能以上の価値を提供しながら、AIやソーシャルコマースの時代に適応できるブランドが、2027年に向けて優位なポジションを築くだろう。
詳細なケーススタディや将来予測については、レポート『Top Five Trends in Beauty and Personal Care』をご覧いただきたい。