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生活費危機:企業と消費者に与える影響とは

12/2/2022
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※本記事は英語でもご覧いただけます。

2022年、世界の経済、企業そして消費者は、数十年にわたる低インフレの後に訪れた物価高騰と生活費の上昇への対処に苦しんでいる。「生活費危機」という言葉は、現在我々の多くが経験している状況を指す言葉としてよく使われるが、「生活費危機」とは一体何を意味し、なぜ起きているのか、そして企業や消費者にどのような影響を与えているのか。これら疑問を考え分析すること、そして明確に説明することは、例えば、消費者が値上げを吸収できるか、あるいは企業はより安価で基礎的な製品やサービスの提供にシフトすべきかなど、企業が戦略や計画を立てるうえで何らかのヒントを与えてくれるはずである。

「インフレ 」と 「生活費危機 」は別物である

「インフレ」と「生活費危機」は同じ意味で使われることがあるが、この2つを区別することが重要である。

  • インフレとは、一般的に物価全体が上昇することを指し、その中には労働の対価(賃金や給料など)も含まれる。
  • 一方、生活費危機とは、食料、住宅、エネルギーなどの生活必需品の価格に見合うように労働の対価、つまり世帯の可処分所得が上昇していない状況を指す。このような場合、家計は実質的に悪化する。生活費を「危機」と表現するのは、物価の急上昇と賃金の停滞により、生活水準が圧迫され、それまでの生活水準の維持ができなくなったり、今まで通りのように食料、燃料、住宅が買えなくなっている状況を示している。

2022年 インフレ率と可処分所得の増加率(前年比、実質成長%)

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生活費危機のはじまりは?

価格の高騰がはじまったのは、パンデミックの後、主要経済国でペントアップ需要が発生しだした2021年から2022年の初頭であった。2021年3月に米国で実施された1.9兆ドルの救済パッケージのような、パンデミックによって余儀なくされたロックダウンから回復するための巨大な景気刺激策が、総需要を大きく押し上げた。しかし、企業はそれまでに人員削減や投資抑制といった対策を行っており、急増する需要に対応する準備が整っていなかった。2021年後半、COVID-19のデルタ株が発生したことも、生産の遅れと供給不足に拍車をかけた。まさに「カネはあるがモノがない」と表現される状況が発生したのだ。さらに、中国によるロックダウンの継続が、世界的なサプライチェーンの不足と混乱、コンテナの深刻な不足を引き起こした。2021年後半のインフレは、デマンドプル(需要過多)とコストプッシュ(コスト上昇)の組み合わせであった。

そして、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻が、さらなる供給ショックを引き起こすと同時に、世界のエネルギーやコモディティ市場に変化をもたらした。結果として、多くの国で燃料や食料の価格が上昇した他、中国のゼロコロナ政策の継続、同年に世界各地で発生した異常気象(大雨、洪水、干ばつ)なども農業生産に影響を与え、輸送費も上昇した。

悪化する消費者信頼感、減少する裁量的支出

経済見通しの悪化、生活費の上昇、先行きが不透明なエネルギーやコモディティ市場といった理由から、主要国の消費者信頼感指数は2022年第2四半期と第3四半期に急落した。第4四半期に入り、世界中で経済悲観論が支配的な中、多くの国の消費者信頼感は依然として低く、2020年のパンデミックロックダウン時に記録した水準とそれほど変わらない。

その結果、2022年には多くの主要経済国で個人消費の成長が低下し、あるいはマイナス成長の領域に入ることが予想される。例えば英国では、GDPの約58%を占める個人消費が、2021年に記録した実質成長率の5.7%から、2022年には実質前年比マイナス0.3%になると予測されている。各国の中央銀行が高インフレ対策に取り組む中、金利上昇は住宅ローン(つまり必需的支出である住宅費)を押し上げ、裁量支出が侵食されるために、家計はさらに圧迫される。一方、実質所得の増加は世界のすべての地域で鈍化すると予測され、特に東欧地域、中東・アフリカ地域では2022年、実質所得が減少するものと見られている。

年間一人当たり可処分所得の成長率(2019~2023年)

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生活費危機はすべての消費者に影響を及ぼすが、そのマイナス影響が最も深刻なのは、トレードダウンの選択肢が限定的で、裁量支出を削減する余地も少ない最低所得者層である。北半球では冬が近づいており、多くの低所得者層が、暖房と食事のどちらかを選ぶかという厳しい選択を迫られている。

対策:値上げ、サイズダウン、ポートフォリオのスリム化

生活費危機は、企業にも悪影響を及ぼしている。購買力低下に伴う消費者の悲鳴に加え、企業はエネルギーや原材料価格の高騰、従業員の賃上げ要求、金利上昇による信用コストの増加に伴う事業コストの上昇という課題に直面することになる。ユーロモニターインターナショナルが2022年6月に実施した「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:小売業サーベイ」調査によると、小売業界の企業関係者のうち、実に10人に9人が、過去12か月の間にインフレが自社の経営に中程度から重大な影響をもたらしたと回答している。

多くの企業は、事業コストの上昇の一部を消費者に転嫁する一方で、自らも利益率の低下を受け入れている。また、シュリンクフレーション(製品サイズを小さくしつつ同価格で販売すること)やスキンプフレーション(サイズやブランドはそのままに、原材料を変更し、品質を低下させつつ同価格で販売すること)を用いて、消費者の囲い込みを図る企業もあるが、後者は前者よりもはるかに欺瞞的と受け取られる可能性がある。提供製品を稼ぎ頭の製品やSKU(バリュープライスやプレミアムクラスの製品)に限定することも、効果的な戦略の1つである。

生活費危機を受け、企業がいかに異なる消費者層に対応すべきかについての詳しい洞察は、当社のレポート「Navigating Cost-of-Living Crisis」をご覧ください。

下記のトピックに関する当社の分析もご確認下さい。

 

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