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サブサハラ・アフリカ地域における10の社会経済的ファクト

6/23/2022
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※本記事は英語でもご覧頂けます:10 Key Socioeconomic Facts About Sub-Saharan Africa

サブサハラ・アフリカ地域では、若くかつ急速に増加する人口によってその市場潜在性が高まり続けており、イノベーション、起業家、そして投資家にとってエキサイティングな商機を提供している。消費者市場の発展は、Mコマースの拡大と金融へのアクセスの拡大を背景に加速し、二国間貿易の活発化により地域統合が進むことが予想される。この地域には膨大な量の再生可能エネルギーが埋蔵されており、分散型エネルギーネットワークを拡大するソリューション発展の可能性を秘めている。そして、農業生産性の向上と地域間所得格差の縮小が、持続的な経済成長をもたらすと考えられている。しかし、インフレ圧力の高まりに伴う購買力の低下、電力への不十分なアクセス、一次産品への高い依存度といった課題にも直面し続けるだろう。

1. 生産年齢人口の増加がイノベーションと起業家精神により多くの機会をもたらす

アフリカでは人口動態が大きく変化し、生産年齢人口比率が世界経済と比較しても顕著に拡大することが予想されている。サブサハラ・アフリカは、今後20年間で世界の人口増加の半分以上を占め、その70%以上がアフリカ大陸の労働年齢人口の増加に起因すると考えられる。雇用機会が限られていること背景に、多くの若いアフリカ人が起業、イノベーション、デジタルトランスフォーメーションをチャンスとして受け止めている。

全人口における生産年齢人口の割合(2010年~2040年)

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2.  デジタルトランスフォーメーションを牽引するMコマース

サブサハラ・アフリカでは、PCを利用できる世帯の割合が比較的少ないこともあり、モバイルインターネットやスマートフォンの普及がデジタルトランスフォーメーションを牽引している。同地域におけるモバイルインターネットの普及率は、過去5年間でほぼ倍増し、2021年には総人口の48%に達し、世帯におけるスマートフォンの普及率は、2021年には77%にまで上昇した。物理的な住所がない場合は、新しい配達ソリューションやパートナーシップ、あるいは中央集荷場を設置することで克服されつつある。例えば、南アフリカで食料雑貨をオンデマンド配達するZulziは、配送プロセスに住所システム「what3words」を取り入れたり、ケニアのオンライン配送サービスMtaaniは、同国のモバイル決済システムM-PESAとリンクした80以上のローカルピックアップポイントを確立するなどしている。

サブサハラ・アフリカ地域におけるタイプ別インターネット普及率(2016年~2026年)

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3. SMEsに重要な資金を提供する現地の融資プラットフォーム

ナイジェリアのQuickCheckのような現地のモバイル融資プラットフォームが台頭し、消費者や中小企業の資金調達の重要なニーズに応えている。さらに、主要都市を中心に、テクノロジー関連の新興企 業が次々と誕生していることから、大手国際企業もアフリカ におけるデジタル・テクノロジー分野の現地企業に投資している。事実、ナイジェリアの金融決済企業Flutterwaveは、数回の資金調達の成功によりアフリカで最も企業価値の高いスタートアップとなった。また、ケニアのAI企業Gro Intelligenceは、2021年にアフリカでは過去最大の資本金8500万米ドルを調達している。

現地・海外問わず、民間セクターの投資を受けた国TOP10(十億USD、2021年)

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4. AfCFTAによって拡大する二国間貿易とデジタルプラットフォームの推進

アフリカ域内貿易は珍しくないが、主に鉱物や低価格の製造・加工品の取引から成っている。二国間貿易を向上させるための鍵は、輸出の多様化と品質の向上であろう。また、主に金融分野、モバイル決済、デジタルショッピングといった越境サービスも、中長期的に恩恵を受けることが考えられる。知的財産権や競争政策の面でまだいくつかのハードルがあるが、アフリカ大陸自由貿易地域(AfCFTA)のEコマースに関するプロトコルは、現地のオンラインプラットフォームの開発と促進を目的としている。

アフリカにおける二国間貿易(2020年~2021年)

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5. 大陸内でばらつく経済成長度合い

サブサハラ・アフリカ地域内の経済成長の回復は、大きな偏りがみられる。アフリカ大陸は、一次産品価格の上昇、ウクライナ情勢を背景とした供給の制限、海外からの資金流入の減少などにより、2022年も課題に直面している。パンデミックの影響からの解放に伴う観光業の回復から、より様々な国が恩恵を受けることが予想されると同時に、アフリカ大陸自由貿易地域は域内貿易を促進することが期待される。資源国は、一次産品の価格上昇から恩恵を受けるだろうが、急激なインフレ圧力に見舞われ、影響を受けやすい世帯に打撃をもたらすことが予想される。

サブサハラ・アフリカ地域内の実質GCP成長率の予測ヒートマップ(%)

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6. 高止まりが続く食料支出に、物価上昇がさらなるプレッシャーをかける

サブサハラ・アフリカでは所得水準が低いことから、他の新興国や開発途上国に比べても食料支出が過度に高い状態が続いている。地政学的緊張、サプライチェーンの混乱、エネルギー価格の上昇が、食品インフレの上昇を招き、消費者の購買力をさらに圧迫している。2021年、食品インフレの影響を大きく受けたのは、エチオピア、アンゴラ、ナイジェリアといった食品および非アルコール飲料への支出が大きい国であった。

様々な要因が食品支出に影響をもたらしているサブサハラ・アフリカ主要国(2021年)

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7. 資源依存の国々に広がる経済・財政の脆弱性

サブサハラ・アフリカには、財政収入と雇用を一次産品に強く依存している国々がある。鉱業・採石業の生産高が大きい地域諸国のうち、このセクターが総GVA(粗付加価値)に占める割合は、先進国の中ではわずか1.3%に過ぎないのに対し、同地域ではタンザニアの6%からアンゴラの39%までと幅広い。現在の一次産品価格の上昇は経済成長を後押ししているが、経済的多様化が欠ける中、一次産品価格の価格が下落する時期を迎えると、経済成長が鈍化し、財政赤字に拍車がかかるという問題は、今後も発生することが予想される。

サブサハラ・アフリカ地域で鉱業・鉱石業の割合が大きい国(2021年)
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8. 膨大な再生可能エネルギー埋蔵量がサブサハラ・アフリカに商機をもたらす

国際エネルギー機関(IEA)によると、2040年までにサブサハラ・アフリカ地域の発電量のほぼ半分を再生可能エネルギーが占めるようになると考えられている。いくつかの国々では、ほぼすべての発電量を再生可能エネルギーで賄っている一方で、地域最大のエネルギー生産国である南アフリカでは、再生可能エネルギーは、総エネルギー生産量のわずか7%に止まっている。地域内における電気の普及率は低いままであり、2021年時点でも人口の47%が電気を利用していない。この問題に取り組むため、エネルギー企業は遠隔地に届く分散型ソリューションとして、ソーラーミニグリッドの拡大に注目しており、また、南アフリカ政府は、2026年までにエネルギーミックス全体の26%を再生可能エネルギーで発電することを目標としている。

サブサハラ・アフリカ主要国の再生可能エネルギーによる発電量(2021年)

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9. 地域間格差の縮小が進む

サブサハラ・アフリカでは、地方部の消費者所得がより速いペースで上昇しており、都市部と地方部の一人当たり所得の格差が縮小しつつある。2016年、サブサハラ・アフリカの地方部における一人当たりの可処分所得は、都市部の41%であったが、2021年には43%に増加している。地方部の消費者所得はさらに上昇し、2040年には都市部の一人当たり可処分所得の67%に相当すると予想されており、地域間格差の縮小と地方部の消費者による支出の拡大の可能性を示唆している。

サブサハラ・アフリカ主要国の一人当たり可処分所得の伸び(2021-2040年)

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10. 向上が期待される農業生産性

2021年時点で、サブサハラ・アフリカ地域の人口の半分以上が農業、狩猟、林業、漁業に従事しているが、このセクターは、同地域の粗付加価値の5分の1未満を産み出すにとどまっている。食料不安に対処し、消費者の所得を向上させるためには、農業の生産性向上が依然として重要であり、同地域の国々の政府は、農業への転換を促進し、小規模農家のサプライチェーンへのアクセス強化に取り組んでいる。過去5年間で、ガーナとエチオピアにおいては、過去5年で農業生産性が37%向上した。これは、アグリビジネスおよび生産高の向上を目的とした農業の機械化に対する投資の増加によるものである。

農業生産性で急成長するサブサハラ・アフリカ諸国(2021年)

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他の日本語記事一覧はこちらから。

(翻訳:横山雅子)

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