Luxury and Fashion Our global industry experts explore the key trends shaping consumer preferences that drive fashion and luxury, using timely insights to stay one step ahead of the latest innovations and business strategies.

円安、インフレでラグジュアリーとマスの二極化が加速する日本のアパレル市場

11/29/2023
Aya Suzuki Profile Picture
Aya Suzuki Bio
Share:

パンデミック以降、日本のアパレル&フットウェア市場は厳しい状況が続いている。2023年も引き続き、高インフレや円安などを背景に、マクロ経済の不透明感が依然として強かった。そのような状況下において、国内アパレル&フットウェア市場ではラグジュアリーブランドとマスブランドの二極化が進んでいる。また、マスブランドをみると、かつて「ファストファッション」として好調だった海外発のブランドが縮小傾向にある一方で、独自路線を進める国内ブランドは存在感を増している。背景には、消費者の価値観が変化し、安さだけを重視するのではなく、価格に対して見合った価値があるかどうかを見極めるようになりつつあることがある。

ラグジュアリーブランドの成長、コスパの良さが要因

2021年以降、Louis Vuitton、FENDI、Dior、HERMES、Chanel、Gucciといったラグジュアリーブランドの力強い成長が目立っている。ラグジュアリーブランドは、原材料や生産コストの上昇、あるいは、ブランド価値の維持という目的を背景に、戦略的な値上げを各社が進めているが、高品質な素材、洗練されたデザイン、ブランドの歴史やストーリーで裏付けされた価値が価格に見合っている、と消費者に支持されている。また、直近ではインバウンド旅行客受け入れ制限の撤廃や、円安の恩恵も受けている。

Apparel and Footwear Sales in Japan出所:ユーロモニターインターナショナル

※主要ラグジュアリーブランド:弊社定義に基づく(Burberry Group Plc, Capri Holdings Ltd, Kering SA, LVMH Moёt Hennessy Louis Vuitton SA, Ralph Lauren Corp, Chanel SA, Tapestry Inc, Salvatore Ferragamo SpA, Hermès International SCA, Hugo Boss AG, Prada SpA, PVH Corp, Citizens of Humanity Inc, Giorgio Armani SpA, Paul Smith Ltd, Tod's SpA)

さらに、シンプルなファッショントレンドが続いていることも、ラグジュアリーブランドが好調を維持している要因の一つだ。特に国内需要を後押ししているのが、ブランドのロゴをコーディネートのアクセントとして取り入れるトレンドである。Tシャツ、帽子、ベルト、靴などのアイテムは、ブランドの主力となる皮革製品やジュエリーと比べると購入しやすい価格帯で、新規の顧客を取り込むためのエントリーモデルとして位置づけられている。そのため、値上げ幅が抑えられている傾向にあり、消費者にとって値ごろ感が強まっている。さらに、こうしたラグジュアリーブランドのアイテムは、中古品売買のプラットフォームでのリセールバリューが期待できるという理由で、経済的に合理性があると消費者が判断していることが、これらブランドの成長を後押ししている。

このように、近年のラグジュアリーブランドの隆盛は、消費者にとって品質やブランド価値、将来的なリセールバリューなどの付加価値を含めた総合的な価値評価の観点から、「コスパ」が良いことが支持されていることが背景にある。

苦戦する海外発「ファストファッション」ブランドと、脱コスト競争を図る国内マスブランド

一方で、原料調達や生産にかかるコストの上昇が、販売価格に転嫁しても顧客離れを招きにくいラグジュアリーブランドとは異なり、コストパフォーマンス重視のマスブランドにとっては厳しい課題となっている。消費者は購入頻度の高い食品や日用品などの値上げに慣れたことで、価格改定を受け入れる傾向にはあるが、マスブランドの中でも、インフレ局面で競争力を維持できているブランドと、そうでないブランドの明暗が分かれている。

例えば、一時期は「ファストファッション」として盛り上がりのあったGAP、American Eagle、Abercrombie & Fitchといった海外発のマスブランドは、2017年頃をピークに、市場の競争激化や、経営効率化のための店舗の削減の影響を受け、苦戦を強いられている。コロナ前と比較すると、海外マスブランドの国内市場シェアは2019年の2.2%から2023年には1.8%と、その存在感を縮小させていることがわかる。

Apparel and Footwear Share in Japan出所:ユーロモニターインターナショナル

※主要国内マスブランド:ファーストリテイリング(ユニクロ、GU)、しまむら(しまむら、アベイル、シャンブル)、ハニーズ、西松屋
※主要海外マスブランド:Inditex (Zara、Zara Kids)、H&M、Gap Inc (Gap、Gap Kids、Banana Republic)、American Eagle Outfitters、Abercrombie & Fitch、Forever 21

それでも、直近ではZaraがMaison Specialと、史上初の日本ブランドとのコラボレーションを実現させたほか、H&MもMuglerやrabanneとのコラボレーションによって話題を集めるなど、コロナの反動もあって売上は回復基調にある。一方で、2023年夏にはフラッグシップ店である銀座店の閉鎖に至るなど、依然として業績低迷から脱却できていないのがGAPだ。同社は、グローバル大量計画生産体制によって、生産から販売までのリードタイムが長期化していることで、ローカルトレンドとの乖離を招き、結果として過剰在庫に直面している。

片やユニクロ、GU、しまむら、西松屋、ハニーズに代表される国内マスブランドは、パンデミック以降も市場のシェアを伸ばしている。各社は2022年下半期以降、価格改定を余儀なくされたものの、下着、Tシャツ、フリースといったボリュームゾーンの定番品を中心に、高機能素材の使用、着心地の良さといった付加価値とともに商品のリニューアルをおこなうことで、値上げへの抵抗感を軽減し、客離れを防いでいる。また、ユニクロやGUは積極的に若年層に人気の高いデザイナーズブランド、あるいはその出身デザイナーとのコラボレーションをおこなうことによって、ブランドイメージや単価の上昇につなげている。2023年のユニクロ×マメクロゴウチ、GU×beautiful peopleのほか、英国のデザイナーで、CHLOEやGIVENCHYなど数多くのラグジュアリーブランドで経験を積んだClare Waight Kellerによる新ラインの「UNIQLO:C」の立ち上げなど、トレンド感を捉え、高級感を演出するデザイナーとのコラボレーションアイテムは、発売の度に話題になり、完売を記録している。

消費者にとってもはや「コスパ」は安さだけではない

このように、日本のアパレル&フットウェア市場は競争の激化とラグジュアリーブランドとマスブランドの二極化が進展しており、その背景には消費者の価値観の変化がある。かつて「コスパ」とは、消費者にとっては価格の安さが大きな要素であったが、今や、ブランド価値や機能性、品質、ローカルのトレンド感、そしてリセールバリューなど、包括的な価値を意味するコンセプトとなった。この傾向はラグジュアリーブランドからマスブランドまで広がっており、今後は付加価値を意識したブランド戦略が、より一層重要になるだろう。

より詳細な市場統計および分析については、こちらのレポートApparel and Footwear in Japanをご覧ください。

その他日本語コンテンツはこちら

Interested in more insights? Subscribe to our content

Shop Our Reports

Beauty and Personal Care in Sri Lanka

Many categories of beauty and personal care saw a decline or stagnation in retail volume terms in 2023. Despite the easing of import restrictions the…

View Report

Beauty and Personal Care in Kenya

Beauty and personal care in Kenya grew in 2023, though volume sales slowed compared to previous review period years. The industry has witnessed a rise in…

View Report

Beauty and Personal Care in Uzbekistan

In 2023, beauty and personal care in Uzbekistan witnessed a remarkable rebound from the challenges posed by the COVID-19 pandemic, as well as ongoing global…

View Report
Passport Our premier global market research database with detailed data and analysis on industries, companies, economies and consumers. Track existing and future opportunities to support critical decision-making across all functions within your organisation Learn More
;